今回のテーマは、民法の「詐害行為取消権」である。
それでは、「マンション管理士試験」で出題された過去問にチャレンジしてみよう。
令和5年度 マンション管理士試験 〔問13〕
〔問 13〕 甲マンション301 号室を所有するAは、その債権者Bを害することを知りつつ、301 号室をCに贈与し、その旨の所有権移転登記がされた。Bが、Aのした贈与について、Cに対して詐害行為取消請求をする場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
1 Bによる詐害行為取消請求に係る訴えは、AがBを害することを知って行為をした時から2年を経過したときは提起することができない。
2 BのAに対する債権がAのCに対する贈与の前の原因に基づいて生じたものではない場合には、Bは詐害行為取消請求をすることができない。
3 甲マンション301 号室の時価が900 万円、BのAに対する債権が400 万円である場合には、Bは、400 万円の限度においてのみ、Aのした贈与の取消しを請求することができる。
4 Bは、Cに対する詐害行為取消請求において、Aのした贈与の取消しとともに、直接自己に甲マンション301 号室の所有権移転登記をするよう請求することができる。
令和5年度 マンション管理士試験
1 誤り。
詐害行為取消請求に係る訴えは、債務者が債権者を害することを知って行為をしたことを債権者が知った時から2年を経過したときは、提起することができない。(民法426条)
したがって、AがBを害することを知って行為をした時から2年を経過したときではない。
なお、詐害行為の時から10年を経過したときは提起することができない。
2 正しい。
債権者は、その債権が詐害行為の前の原因に基づいて生じたものである場合に限り詐害行為取消請求をすることができる。(424条3項)
3 誤り。
権者は、詐害行為取消請求をする場合において、債務者がした行為の目的が可分であるときは、自己の債権の額の限度においてのみ、その行為の取消しを請求することができる。(424の8第1項)
本肢の場合、マンション301 号室の贈与であり、可分とはいえない。
4 誤り。
債権者は、受益者又は転得者に対して財産の返還を請求する場合において、その返還の請求が金銭の支払又は動産の引渡しを求めるものであるときは、受益者に対してその支払又は引渡しを、転得者に対してその引渡しを、自己に対してすることを求めることができる。(424条の9第1項)
本肢の場合、マンション301 号室に対するものであり、直接自己に所有権移転登記をするよう請求することはできない。(424条の9第1項の反対解釈、最判昭53.10.5)