今回のテーマは、「管理費の滞納」である。

それでは、「令和3年度 管理業務主任者試験」で出題された過去問にチャレンジしてみよう。

令和3年度 管理業務主任者試験問題 【問 10】

【問10】管理費の滞納が生じたときにとられる通常の民事訴訟によらない法的手段に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。

1 「内容証明郵便による督促」の場合は、簡便な手続であるが、消滅時効の完成猶予をさせる催告としての効力は生じない。
2 「支払督促」による場合は、簡易裁判所に申し立てることにより書記官が支払を命ずる簡略な手続であるが、債務者から異議申立てがなされると通常の訴訟に移行してしまう。
3 「調停」による場合は、弁護士等の専門家に依頼することはできないが、手続が訴訟に比べ簡明であり、調停委員の意見には強制力があることから、紛争が早期に解決される。
4 「少額訴訟」による場合は、通常訴訟に比べ、少ない経済的負担で迅速かつ効果的に解決することができるが、訴訟の目的の価額が60万円以下に制限されるため、滞納額が60万円を超えるときは、制限額以下に分割したとしてもこの手続を利用できない。

令和3年度 管理業務主任者試験問題

正解:2

それでは、各肢を検討していこう。
なお、問題は、2021年4月1日現在施行されている法令等により出題されているが、正解及び解説は2023年11月15日現在施行されている法令等に基づいて執筆する。

本テーマはこれまでに取り上げている。↓
管理業務主任者の過去問を解いてみよう(令和4年度)「管理費の滞納」

1 誤り。

催告があったときは、その時から6か月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。(民法150条1項)

そして、「内容証明郵便による督促」も消滅時効の完成猶予をさせる催告としての効力が生じる。

2 正しい。

債務者は、支払督促に対し、督促異議の申立てをすることができる。(民事訴訟法390条、393条)

適法な督促異議の申立てがあったときは、督促異議に係る請求については、その目的の価額に従い、支払督促の申立ての時に、支払督促を発した裁判所書記官の所属する簡易裁判所又はその所在地を管轄する地方裁判所に訴えの提起があったものとみなす。(民事訴訟法395条前段)

3 誤り。

調停において当事者間に合意が成立し、これを調書に記載したときは、調停が成立したものとし、その記載は、裁判上の和解と同一の効力を有する。(民事調停法16条)

ただし、調停委員の意見には強制力はない

4 誤り。

簡易裁判所においては、訴訟の目的の価額が60万円以下の金銭の支払の請求を目的とする訴えについて、少額訴訟による審理及び裁判を求めることができる。(民事訴訟法368条1項本文)

ただ、訴訟の目的の価額は原告が自由に決定することができるので、本肢のような対応も可能である。