今回のテーマは、「転貸」である。

それでは、「賃貸不動産経営管理士」試験で出題された民法の過去問にチャレンジしてみよう。

令和2年度 賃貸不動産経営管理士試験問題

【問 11】 賃貸人AがBに賃貸し、BがAの承諾を得てCに転貸する建物についてのAB間の原賃貸借契約の終了に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

1 AB間の原賃貸借契約に、同契約の終了によりAが転貸借契約を承継する旨の特約がある場合、AB間の原賃貸借契約が終了すれば、AはBの転貸人の地位を承継するが、BのCに対する敷金返還義務は承継しない。

2 AがBの賃料滞納を理由として有効に原賃貸借契約を解除したとしても、AがCに対して催告をしていなかった場合は、AはCに対して建物の明渡しを請求することはできない。

3 AB間の原賃貸借契約が定期建物賃貸借契約で期間満了により終了する場合、AがCに対して原賃貸借契約が終了する旨を通知した時から6か月を経過したときは、AはCに対して建物の明渡しを請求することができる。

4 AがBとの間で原賃貸借契約を合意解除した場合、その当時、AがBの賃料滞納を理由とする原賃貸借契約の解除権を有していたとしても、AはCに対して建物の明渡しを請求することはできない。 

令和2年 度賃貸不動産経営管理士試験問題
令和2年11月15日 
正解:3

それでは、各肢を検討していこう。なお、2022年4月1日現在の法令に基づいているものとする。

1 誤り。

原賃貸借契約の終了によりAが転貸借契約を承継する旨の特約は有効である。よって、原賃貸借契約が終了すれば、原貸借人Aは、転貸人Bの地位を承継し、BのCに対する敷金返還義務も負う。

2 誤り。

賃貸借契約が、転貸人の債務不履行を理由とする解除により終了した場合、賃貸人の承諾のある転貸借は、原則として賃貸人が転借人に対して、目的物の返還を請求した時に、転貸人の転借人に対する債務不履行により終了する。(最判平9.2.25)このとき、賃貸人は転借人に対して催告する必要はない。(最判平6.7.18)

したがって、AがCに対して催告をしていなかった場合でも、AはCに対して建物の明渡しを請求することができる。

賃貸借が賃借人の債務不履行を理由とする解除により終了した場合、賃貸人の承諾のある転貸借は、原則として、賃貸人が転借人に対して目的物の返還を請求した時に、転貸人の転借人に対する債務の履行不能により終了する。
(最判平9.2.25)

適法な転貸借関係が存在する場合、賃貸人が賃料の不払を理由として賃貸借契約を解除するには、特段の事情のない限り、転借人に通知等をして賃料の代払の機会を与えなければならないものではない。
(最判平6.7.18)

3 正しい。

建物の転貸借がされている場合において、建物の賃貸借が期間の満了又は解約の申入れによって終了するときは、建物の賃貸人は、建物の転借人にその旨の通知をしなければ、その終了を建物の転借人に対抗することができない。(借地借家法34条1項)そして、建物の賃貸人が当該通知をしたときは、建物の転貸借は、その通知がされた日から6か月を経過することによって終了する。(借地借家法34条2項)

したがって、AがCに対して当該通知をした時から6か月を経過したときは、AはCに対して建物の明渡しを請求することができる。

(建物賃貸借終了の場合における転借人の保護)
第三十四条 建物の転貸借がされている場合において、建物の賃貸借が期間の満了又は解約の申入れによって終了するときは、建物の賃貸人は、建物の転借人にその旨の通知をしなければ、その終了を建物の転借人に対抗することができない。
2 建物の賃貸人が前項の通知をしたときは、建物の転貸借は、その通知がされた日から六月を経過することによって終了する。

借地借家法・e-Gov法令検索

4 誤り。

賃借人が適法に賃借物を転貸した場合には、賃貸人は、賃借人との間の賃貸借を合意により解除したことをもって転借人に対抗することができない。ただし、その解除の当時、賃貸人が賃借人の債務不履行による解除権を有していたときは、この限りでない。(613条3項ただし書)

したがって、AがBの賃料滞納を理由とする原賃貸借契約の解除権を有していたときは、AはCに対して建物の明渡しを請求することができる。

(転貸の効果)
第六百十三条 (略)
3 賃借人が適法に賃借物を転貸した場合には、賃貸人は、賃借人との間の賃貸借を合意により解除したことをもって転借人に対抗することができない。ただし、その解除の当時、賃貸人が賃借人の債務不履行による解除権を有していたときは、この限りでない。

民法・e-Gov法令検索