今回のテーマは、「賃貸物件の修繕」である。

それでは、「賃貸不動産経営管理士」試験で出題された民法の過去問にチャレンジしてみよう。

令和2年度 賃貸不動産経営管理士試験問題

【問 23】 賃貸物件の修繕に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

1 賃貸物件が借主の責めにより修繕を要することになった場合、貸主は修繕義務を免れる。

2 賃貸物件につき雨漏りが生じ、貸主が修繕する場合、借主はこれを拒めない。

3 借主が修繕の必要性を貸主に通知し、貸主がその旨を知ったにもかかわらず相当期間内に修繕をしない場合、借主は賃貸物件の使用収益ができない範囲で賃料の支払を拒絶することはできるが、自ら修繕することはできない。

4 貸主は、大地震により賃貸物件の一部が破損した場合でも、当該部分の修繕義務を負う。

令和2年度 賃貸不動産経営管理士試験問題 令和2年11月15日
正解:3

それでは、各肢を検討していこう。なお、2022年4月1日現在の法令に基づいているものとする。

1 正しい。

賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。ただし、賃借人の責めに帰すべき事由によってその修繕が必要となったときは、この限りでない。(606条1項ただし書)

したがって、貸主は修繕義務を免れる。

(賃貸人による修繕等)
第六百六条 賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。ただし、賃借人の責めに帰すべき事由によってその修繕が必要となったときは、この限りでない。
2 賃貸人が賃貸物の保存に必要な行為をしようとするときは、賃借人は、これを拒むことができない。

民法・e-Gov法令検索

2 正しい。

賃貸人が賃貸物の保存に必要な行為をしようとするときは、賃借人は、これを拒むことができない。(606条2項)

したがって、貸主が雨漏りを修繕する場合、借主はこれを拒めない。

3 誤り。

賃借人が賃貸人に修繕が必要である旨を通知し、又は賃貸人がその旨を知ったにもかかわらず、賃貸人が相当の期間内に必要な修繕をしないとき、賃借人は、その修繕をすることができる。(607条の2①号)

したがって、借主は自ら修繕できる。

(賃借人による修繕)
第六百七条の二 賃借物の修繕が必要である場合において、次に掲げるときは、賃借人は、その修繕をすることができる。
一 賃借人が賃貸人に修繕が必要である旨を通知し、又は賃貸人がその旨を知ったにもかかわらず、賃貸人が相当の期間内に必要な修繕をしないとき。
二 急迫の事情があるとき。

民法・e-Gov法令検索

4 正しい。

賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。(606条1項本文)

この修繕義務は、賃貸人に帰責事由がある場合はもとより、当事者双方に帰責事由がない場合(天変地異等、不可抗力によって生じた場合)でも賃貸人は修繕義務を負う。

したがって、貸主は、大地震により賃貸物件の一部が破損した場合でも、当該部分の修繕義務を負う。