賃貸不動産経営管理士の役割
賃貸不動産経営管理士は、法律における業務管理者として業務管理者が行うべき業務を実施するほか、法律では業務管理者の行う業務とはされていない賃貸住宅管理業者が実施する業務についても自ら実施等することによって、賃貸住宅の管理の適正化に資することが求められます。
また、特定賃貸借契約における特定転貸事業者(サブリース業者)が行わなければならないとされている業務を実施等することによって、賃貸住宅の入居者(転借人)の居住の安定の確保及び賃貸住宅の賃貸に係る事業の公正かつ円滑な実施に寄与することが求められます。
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さて、今回のテーマは、「賃料の供託」である。
それでは、「賃貸不動産経営管理士」試験で出題された民法の過去問にチャレンジしてみよう。
令和2年度 賃貸不動産経営管理士試験問題
【問 21】 賃料の供託に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
1 貸主に賃料を受領してもらうことが期待できない場合、借主は直ちに供託することができる。
2 自身が貸主であると主張する者が複数名おり、借主が過失なく貸主を特定できない場合、借主はそのうちの一人に賃料を支払えば賃料支払義務を免れるため、賃料を供託することができない。
3 貸主は、いつでも供託金を受領することができる。
4 供託所は、借主により供託がなされた場合、遅滞なく、貸主に供託の事実を通知しなければならない。
令和2年度 賃貸不動産経営管理士試験問題 令和2年11月15日
正解:3
それでは、各肢を検討していこう。なお、2022年4月1日現在の法令に基づいているものとする。
1 誤り。
弁済者は、(1)弁済の提供をした場合において、債権者がその受領を拒んだとき、(2)債権者が弁済を受領することができないとき、(3)弁済者が過失なくして、債権者を確知することができないときには、債権者のために弁済の目的物を供託することができる。(494条1項、2項)
本肢は、いずれの条件にも該当しない、したがって、供託することができない。
(供託)
第四百九十四条 弁済者は、次に掲げる場合には、債権者のために弁済の目的物を供託することができる。この場合においては、弁済者が供託をした時に、その債権は、消滅する。
一 弁済の提供をした場合において、債権者がその受領を拒んだとき。
二 債権者が弁済を受領することができないとき。
2 弁済者が債権者を確知することができないときも、前項と同様とする。ただし、弁済者に過失があるときは、この限りでない。
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2 誤り。
肢1の解説中の「弁済者が過失なくして、債権者を確知することができないとき」に該当する。したがって、借主は供託することができる。 (494条)
3 正しい。
弁済の目的物等が供託された場合には、債権者は、供託物の還付を請求することができる。(498条1項)
同時履行の抗弁権(533条)など還付の条件がない場合には、還付時期についての制約はないと解される。したがって、貸主は、いつでも供託金を受領することができる。
(供託物の還付請求等)
第四百九十八条 弁済の目的物又は前条の代金が供託された場合には、債権者は、供託物の還付を請求することができる。
2 債務者が債権者の給付に対して弁済をすべき場合には、債権者は、その給付をしなければ、供託物を受け取ることができない。
(同時履行の抗弁)
第五百三十三条 双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行(債務の履行に代わる損害賠償の債務の履行を含む。)を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができる。ただし、相手方の債務が弁済期にないときは、この限りでない。
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4 誤り。
「供託をした者」は、遅滞なく、債権者に供託の通知をしなければならない。(495条3項)
したがって、供託所でなく借主が、遅滞なく、貸主に供託の事実を通知しなければならない。
(供託の方法)
第四百九十五条 前条の規定による供託は、債務の履行地の供託所にしなければならない。
2 供託所について法令に特別の定めがない場合には、裁判所は、弁済者の請求により、供託所の指定及び供託物の保管者の選任をしなければならない。
3 前条の規定により供託をした者は、遅滞なく、債権者に供託の通知をしなければならない。
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