賃貸不動産経営管理士資格取得のメリットとは

賃貸不動産管理業務について一定の知識を備えている証拠になり、他者との差別化が図れます。また、令和3年6月15日に施行された「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」における、賃貸住宅管理業務を行ううえでの設置が義務付けられている「業務管理者」の要件を満たすことができます。

一般社団法人賃貸不動産経営管理士協議会 のサイトより

今回のテーマは、「契約の解除」である。

それでは、「賃貸不動産経営管理士」試験で出題された民法の過去問にチャレンジしてみよう。

令和2年度 賃貸不動産経営管理士試験問題

【問 24】 貸主が、借主の賃料不払を理由として建物賃貸借契約を解除する場合に関する次の記述のうち、誤っているものの組合せはどれか。ただし、それぞれの選択肢に記載のない事実及び特約はないものとする。 

ア 賃料の支払を1か月でも滞納すれば貸主が催告を経ずに賃貸借契約を解除できるという特約を定めた場合、11 月分までの賃料に滞納はなかったが、11月末日が支払期限である 12 月分の賃料が支払われなかったときは、12 月1日に貸主が行った解除通知は有効である。 

イ 借主に対して解除を通知した上で建物明渡請求訴訟を提起した貸主は、賃料の不払につき借主に故意過失があったことについては立証する必要はない。

ウ 賃料不払のため契約を解除すると口頭で伝えられた借主が、通知を書面で受け取っていないので解除は無効であると反論したが、このような反論は解除の効力に関係がない。 

エ 賃料が3か月間滞納されていることを理由に契約を解除するとの通知書を受け取った借主が、それまで一度も滞納賃料の催告を受けたことがないので解除は無効であると反論したが、このような反論は解除の効力に関係がない。
 
1 ア、エ 
2 イ、ウ 
3 ウ、エ 
4 ア、イ
正解:1

それでは、各肢を検討していこう。なお、2022年4月1日現在の法令に基づいているものとする。

ア 誤り。

当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。(541条本文)

ただし、その期間を経過した時における債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、この限りでない。(541条ただし書)

そして、民法542条には無催告解除が認められる要件が列挙されているが、1カ月分の賃料滞納はこのいずれにも該当しないと解されるので、無催告解除は認められない。そのことは、無催告解除の特約があったとしても、変わりはないと考えられる。

ただし、1カ月の滞納でも、これにより、当事者間の信頼関係が破壊されるような場合には、例外的に解除が認められる場合がある。

したがって、12 月1日に貸主が行った解除通知は有効とはいえない。

(催告による解除)
第五百四十一条 当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。ただし、その期間を経過した時における債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、この限りでない。

(催告によらない解除)
第五百四十二条 次に掲げる場合には、債権者は、前条の催告をすることなく、直ちに契約の解除をすることができる。
一 債務の全部の履行が不能であるとき。
二 債務者がその債務の全部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。
三 債務の一部の履行が不能である場合又は債務者がその債務の一部の履行を拒絶する意思を明確に表示した場合において、残存する部分のみでは契約をした目的を達することができないとき。
四 契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、債務者が履行をしないでその時期を経過したとき。
五 前各号に掲げる場合のほか、債務者がその債務の履行をせず、債権者が前条の催告をしても契約をした目的を達するのに足りる履行がされる見込みがないことが明らかであるとき。
2 次に掲げる場合には、債権者は、前条の催告をすることなく、直ちに契約の一部の解除をすることができる。
一 債務の一部の履行が不能であるとき。
二 債務者がその債務の一部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。

民法・e-Gov法令検索

イ 当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。(541条本文)

すなわち、契約の解除をするためには、債務者の帰責事由(故意過失)は不要である。

したがって、貸主は、賃料の不払につき借主に故意過失があったことについては立証する必要はない。

ウ 正しい。

契約又は法律の規定により当事者の一方が解除権を有するときは、その解除は、相手方に対する意思表示によってする。(540条1項)

この意思表示は、書面で行う必要はない。したがって、このような反論は解除の効力に関係がない。

(解除権の行使)
第五百四十条 契約又は法律の規定により当事者の一方が解除権を有するときは、その解除は、相手方に対する意思表示によってする。
(略)

エ 誤り。

当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。(541条本文)

本肢では、賃貸人から賃借人に対して、当該履行の催告がなされていない。したがって、このような反論は解除の効力に関係がないとは言えない。