今回は、資格試験で出題された民法の過去問にチャレンジしてみよう。宅地建物取引士資格試験から問題を取り上げる。
さっそく、過去問にチャレンジしてみよう。
【問3】成年後見人が、成年被後見人を代理して行う次に掲げる法律行為のうち、民法の規定によれば、家庭裁判所の許可を得なければ代理して行うことができないものはどれか。
1 成年被後見人が所有する乗用車の第三者への売却
2 成年被後見人が所有する成年被後見人の居住の用に供する建物への第三者の抵当権の設定
3 成年被後見人が所有するオフィスビルへの第三者の抵当権の設定
4 成年被後見人が所有する倉庫についての第三者との賃貸借契約の解除
宅地建物取引士資格試験 令和3年度(12月19日)問題
正解 2
成年被後見人については、「学びを始めよう」ブログの過去の記事をご参照いただきたい。
後見が開始されると、保護者として成年後見人が置かれる。
成年後見人には同意権がない。成年被後見人は成年後見人の同意を得て行為をしたとしても、有効な行為をすることができないとされている。
これ以外の取消権(120条1項)、追認権(122条)、代理権(859条)については、成年後見人は権限をもつとされる。
本問題は、成年後見人の代理行為についての問題である。
(財産の管理及び代表)
第八百五十九条 後見人は、被後見人の財産を管理し、かつ、その財産に関する法律行為について被後見人を代表する。
(略)
民法・e-Gov法令検索
肢1のケース(成年被後見人が所有する乗用車の売却)は、成年被後見人は単独では行えないので、成年後見人に代理してもらうことになる。肢3、4も同様。
ただし、成年被後見人の居住用不動産の処分については例外がある。
(成年被後見人の居住用不動産の処分についての許可)
第八百五十九条の三 成年後見人は、成年被後見人に代わって、その居住の用に供する建物又はその敷地について、売却、賃貸、賃貸借の解除又は抵当権の設定その他これらに準ずる処分をするには、家庭裁判所の許可を得なければならない。
民法・e-Gov法令検索
成年被後見人には、例えば認知症の方が該当するが、このような方には居住環境は非常に大切な要素になっている。居住環境が変わることによって症状が悪化する懸念がある。そこで、民法は、このような成年後見人の代理行為に関して特に制限を加えている。
そのため、成年後見人が代理するだけでなく、さらに家庭裁判所の許可を必要としている。
よって、家庭裁判所の許可が必要な代理行為は、肢2となる。
(参考文献)民法総則「第2版」 原田 昌和 他著 (日本評論社)、C-Book 民法I〈総則〉 改訂新版(東京リーガルマインド)