宅地建物取引士資格試験(宅建試験)で出題された民法の過去問にチャレンジしてみよう。
今回のテーマは、「制限行為能力者」である。
令和4年度 宅地建物取引士資格試験 問題
【問 3】 制限行為能力者に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
1 成年後見人は、後見監督人がいる場合には、後見監督人の同意を得なければ、成年被後見人の法律行為を取り消すことができない。
2 相続の放棄は相手方のない単独行為であるから、成年後見人が成年被後見人に代わってこれを行っても、利益相反行為になることはない。
3 成年被後見人は成年被後見人の法定代理人である一方、保佐人は被保佐人の行為に対する同意権と取消権を有するが、代理権が付与されることはない。
4 令和4年4月1日からは、成年年齢が18歳となったため、18歳の者は、年齢を理由とする後見人の欠格事由に該当しない。
令和4年度 宅地建物取引士資格試験 令和4年10月16日
正解:4
それでは、各肢を検討していこう。なお、法令等は、令和4年4月1日現在で施行されているものによるものとする。
1 誤り。
後見監督人とは
家庭裁判所は、必要があると認めるときは、被後見人、その親族若しくは後見人の請求により又は職権で、後見監督人を選任することができる。(849条)
そして、後見監督人には、未成年後見監督人と成年後見監督人がある。
また、後見監督人の職務については以下の通りである。(851条)
(後見監督人の職務)
第八百五十一条 後見監督人の職務は、次のとおりとする。
一 後見人の事務を監督すること。
二 後見人が欠けた場合に、遅滞なくその選任を家庭裁判所に請求すること。
三 急迫の事情がある場合に、必要な処分をすること。
四 後見人又はその代表する者と被後見人との利益が相反する行為について被後見人を代表すること。
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なお、後見監督人の同意を要する行為は以下の通りである。
(後見監督人の同意を要する行為)
第八百六十四条 後見人が、被後見人に代わって営業若しくは第十三条第一項各号に掲げる行為をし、又は未成年被後見人がこれをすることに同意するには、後見監督人があるときは、その同意を得なければならない。ただし、同項第一号に掲げる元本の領収については、この限りでない。
(保佐人の同意を要する行為等)
第十三条 被保佐人が次に掲げる行為をするには、その保佐人の同意を得なければならない。ただし、第九条ただし書に規定する行為については、この限りでない。
一 元本を領収し、又は利用すること。
二 借財又は保証をすること。
三 不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること。
四 訴訟行為をすること。
五 贈与、和解又は仲裁合意(仲裁法(平成十五年法律第百三十八号)第二条第一項に規定する仲裁合意をいう。)をすること。
六 相続の承認若しくは放棄又は遺産の分割をすること。
七 贈与の申込みを拒絶し、遺贈を放棄し、負担付贈与の申込みを承諾し、又は負担付遺贈を承認すること。
八 新築、改築、増築又は大修繕をすること。
九 第六百二条に定める期間を超える賃貸借をすること。
十 前各号に掲げる行為を制限行為能力者(未成年者、成年被後見人、被保佐人及び第十七条第一項の審判を受けた被補助人をいう。以下同じ。)の法定代理人としてすること。
(略)
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したがって、後見人は、営業若しくは第十三条第一項各号に掲げる行為を行う以外は、後見監督人の同意を得る必要はない。
2 誤り。
利益相反行為とは
代理人と本人の利益が相反する行為をいう。(108条2項本文)
「利益が相反する行為」かどうかは、もっぱらその行為の外形から客観的に判断すべきであり、代理人の動機や意図から判断すべきではないと解される。(最判昭42.4.18参照)なので、本人の財産が減って後見人の財産が増える行為は利益相反行為となる。本人による「相続の放棄」は利益相反行為に該当する。
3 誤り。
保佐人とは
保佐開始の審判を受けた者は、被保佐人とし、これに保佐人を付する。(12条)
保佐人には同意権があり、(13条1項)取消権が認められている(120条1項)が、代理権はない。もっとも、家庭裁判所は、被補佐人の申し立て又は同意を要件として、当事者等が申し立てた特定の法律行為について保佐人に代理権を付与する旨の審判をすることができる。(876条の4)
(保佐人に代理権を付与する旨の審判)
第八百七十六条の四 家庭裁判所は、第十一条本文に規定する者又は保佐人若しくは保佐監督人の請求によって、被保佐人のために特定の法律行為について保佐人に代理権を付与する旨の審判をすることができる。
2 本人以外の者の請求によって前項の審判をするには、本人の同意がなければならない。
(略)
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4 正しい。
後見人の欠格事由は以下の通りである。
(後見人の欠格事由)
第八百四十七条 次に掲げる者は、後見人となることができない。
一 未成年者
二 家庭裁判所で免ぜられた法定代理人、保佐人又は補助人
三 破産者
四 被後見人に対して訴訟をし、又はした者並びにその配偶者及び直系血族
五 行方の知れない者
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また成年の定義は、
(成年)
第四条 年齢十八歳をもって、成年とする。
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したがって、18歳の者は、年齢を理由とする後見人の欠格事由に該当しない。