今回のテーマは、「借地借家法(借地権)」である。

それでは、宅地建物取引士資格試験(宅建試験)の過去問にチャレンジしてみよう。

令和4年度 宅地建物取引士資格試験 【問11】

【問11】 建物所有を目的とする土地の賃貸借契約(定期借地権及び一時使用目的の借地権となる契約を除く。)に関する次の記述のうち、借地借家法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
1 借地権の存続期間が満了する前に建物の滅失があった場合において、借地権者が借地権の残存期間を超えて存続すべき建物を築造したときは、その建物を築造することにつき借地権設定者の承諾がない場合でも、借地権の期間の延長の効果が生ずる。
2 転借地権が設定されている場合において、転借地上の建物が滅失したときは、転借地権は消滅し、転借地権者(転借人)は建物を再築することができない。
3 借地上の建物が滅失し、借地権設定者の承諾を得て借地権者が新たに建物を築造するに当たり、借地権設定者が存続期間の満了の際における借地の返還確保の目的で、残存期間を超えて存続する建物を築造しない旨の特約を借地権者と結んだとしても、この特約は無効である。
4 借地上の建物所有者が借地権設定者に建物買取請求権を適法に行使した場合、買取代金の支払いがあるまでは建物の引渡しを拒み続けるとともに、これに基づく敷地の占有についても賃料相当額を支払う必要はない。

令和4年度 宅地建物取引士資格試験 令和4年10月16日
正解:3

それでは、各肢を検討していこう。なお、法令等は、令和4年4月1日現在で施行されているものによるものとする。

1 誤り。

借地権の存続期間が満了する前に建物が滅失した場合において、借地権者が残存期間を超えて存続すべき建物を築造したときは、その建物を築造に対する借地権設定者の承諾がある場合に限って、借地権は、承諾があった日又は建物が築造された日のいずれか早い日から20年間存続する。ただし、残存期間がこれより長いとき、又は当事者がこれより長い期間を定めたときは、その期間による。(借地借家法7条1項)

よって、借地権設定者の承諾がない場合には、借地権の期間の延長の効果が生じない。

(建物の再築による借地権の期間の延長)
第七条 借地権の存続期間が満了する前に建物の滅失(借地権者又は転借地権者による取壊しを含む。以下同じ。)があった場合において、借地権者が残存期間を超えて存続すべき建物を築造したときは、その建物を築造するにつき借地権設定者の承諾がある場合に限り、借地権は、承諾があった日又は建物が築造された日のいずれか早い日から二十年間存続する。ただし、残存期間がこれより長いとき、又は当事者がこれより長い期間を定めたときは、その期間による。

2 借地権者が借地権設定者に対し残存期間を超えて存続すべき建物を新たに築造する旨を通知した場合において、借地権設定者がその通知を受けた後二月以内に異議を述べなかったときは、その建物を築造するにつき前項の借地権設定者の承諾があったものとみなす。ただし、契約の更新の後(同項の規定により借地権の存続期間が延長された場合にあっては、借地権の当初の存続期間が満了すべき日の後。次条及び第十八条において同じ。)に通知があった場合においては、この限りでない。

3 転借地権が設定されている場合においては、転借地権者がする建物の築造を借地権者がする建物の築造とみなして、借地権者と借地権設定者との間について第一項の規定を適用する。
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2 誤り。

転借地権が設定されている場合においては、転借地権者がする建物の築造を借地権者がする建物の築造とみなして、借地権者と借地権設定者との間について借地借家法7条1項の規定を適用する。(借地借家法7条3項)

したがって、転借地権者(転借人)は建物を再築できる。

3 正しい。

借地権の存続期間等の規定に反する特約で借地権者に不利なものは、無効とする。(借地借家法9条)

本肢の特約は、再築による存続期間の延長を認める借地借家法の規定よりも不利であり、無効となる。

4 誤り。

賃貸借契約が存続しえない場合、土地所有者に対して時価で建物を買い取ることを請求することができる(借地借家法13条、14条)

そして、土地所有者から代金が支払われるまでは、建物所有者が同時履行の抗弁権ないし留置権により、建物の引渡を拒むことができるが、明け渡しのときまでの賃料相当額を不当利得として土地所有者に支払わなければならない。

(建物買取請求権)
第十三条 借地権の存続期間が満了した場合において、契約の更新がないときは、借地権者は、借地権設定者に対し、建物その他借地権者が権原により土地に附属させた物を時価で買い取るべきことを請求することができる。
2 前項の場合において、建物が借地権の存続期間が満了する前に借地権設定者の承諾を得ないで残存期間を超えて存続すべきものとして新たに築造されたものであるときは、裁判所は、借地権設定者の請求により、代金の全部又は一部の支払につき相当の期限を許与することができる。
3 前二項の規定は、借地権の存続期間が満了した場合における転借地権者と借地権設定者との間について準用する。
(第三者の建物買取請求権)
第十四条 第三者が賃借権の目的である土地の上の建物その他借地権者が権原によって土地に附属させた物を取得した場合において、借地権設定者が賃借権の譲渡又は転貸を承諾しないときは、その第三者は、借地権設定者に対し、建物その他借地権者が権原によって土地に附属させた物を時価で買い取るべきことを請求することができる。

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参考)C-Book 民法IV〈債権各論〉 改訂新版 (東京リーガルマインド)、新プリメール民法4 債権各論〔第2版〕青野博之ほか著 (法律文化社)