本稿では、「建物の区分所有等に関する法律」を「区分所有法」という。

今回のテーマは、「区分所有法」の「管理組合等」である。

それでは、「マンション管理士試験」で出題された過去問にチャレンジしてみよう。

令和5年度 マンション管理士試験 〔問2〕

〔問 2〕 管理組合、団地管理組合及び管理組合法人に関する次の記述のうち、区分所有法及び民法(明治29 年法律第89 号)の規定によれば、誤っているものはいくつあるか。ただし、規約に別段の定めはないものとする。

ア 法定共用部分を専有部分とする場合には、これについて、その共有者全員の同意が必要である。
イ 管理組合及び団地管理組合においては、その職務に関し、管理者が区分所有者を代理し、管理組合法人においては、その事務に関し、代表権のある理事が共同して区分所有者を代理する。
ウ 管理組合及び団地管理組合の管理者を共用部分の管理所有者とする規約を定めることができるが、管理組合法人の理事を共用部分の管理所有者とする規約を定めることはできない。
エ 共同利益背反行為に該当する行為により当該義務違反者に対して区分所有権の競売請求に係る訴訟を提起するため、管理組合及び団地管理組合の管理者、並びに管理組合法人の代表権のある理事を訴訟担当者として選任することは、それぞれの集会で決議することができる。
1 一つ
2 二つ
3 三つ
4 四つ

令和5年度 マンション管理士試験

正解:3

ア 正しい。

共用部分を専有部分に変更すると、共用部分が減少することになり、共有者全員の利害に関係する。
したがって、原則として、民法251条の規定により共有者全員の承諾が必要になる。

(共有物の変更)
第251条 各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。次項において同じ。)を加えることができない。
(略)

民法・e-Gov法令検索

なお、法定共用部分とは、一見して共用部分とわかる、廊下や階段、エレベーターなどのことである。
そのような場所を手続きで簡単に専用部分に変更できるような印象を与え、出題としては疑義が残る。

イ 誤り。

区分所有者は、全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体(管理組合)を構成し、区分所有法の定めるところにより、集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができる。(区分所有法3条)

また、一団地内に数棟の建物があって、その団地内の土地又は附属施設がそれらの建物の所有者(専有部分のある建物にあっては、区分所有者)の共有に属する場合には、それらの所有者(団地建物所有者)は、全員で、その団地内の土地、附属施設及び専有部分のある建物の管理を行うための団体(団地管理組合)を構成し、集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができる。(65条)

そして、管理組合において、管理者は、その職務に関し、区分所有者を代理する。(26条2項)
そして、団地管理組合においても同様である。(66条)

一方、管理組合法人は、その事務に関し、区分所有者を代理する。(47条6項)
したがって、管理組合法人においては、その事務に関し、代表権のある理事が共同して区分所有者を代理するわけではない。管理組合法人自身が区分所有者を代理する権限を有する。

ウ 誤り。

管理者は、規約に特別の定めがあるときは、共用部分を所有することができる。(27条1項)管理所有

ところが、団地管理組合において、この規定は準用されておらず、団地管理組合の管理者を共用部分の管理所有者とする規約を定めることはできない。(66条参照)

なお、管理組合法人には、管理者に関する規定(25条~29条)は適用されない。(47条11項)
したがって、管理組合法人には管理所有という制度はない。

エ 誤り。

共同利益背反行為による区分所有者の共同生活上の障害が著しく、他の方法によってはその障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であるときは、他の区分所有者の全員又は管理組合法人は、集会の決議に基づき、訴えをもって、当該行為に係る区分所有者の区分所有権及び敷地利用権の競売を請求することができる。(59条1項)

そして、管理組合においては、管理者又は集会において指定された区分所有者は、集会の決議により、他の区分所有者の全員のために、その訴訟を提起することができる。(59条2項、57条3項)

しかし、団地管理組合においては、義務違反者に対する規定が準用されておらず、団地管理組合の管理者を訴訟担当者として選任することはできない。(66条参照)

また、管理組合法人の代表権のある理事を訴訟担当者として選任することもできない。(47条8項)