今回のテーマは、「民法の相続(遺産分割協議)」である。

それではさっそく、「マンション管理士試験」で出題された過去問にチャレンジしてみよう。

令和4年度 マンション管理士試験 〔問17〕

問 17〕 甲マンション 303 号室の所有者Aが死亡し、Aの子であるB及びCがAを共同で相続した。Aの遺産は、303 号室と現金 1,000 万円である。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。ただし、Aの遺言はないものとする。
1 BC間の遺産分割の協議により、303 号室と 1,000 万円をBが取得し、Cは何も取得しない旨の遺産分割をした場合、この協議は無効である。
2 BC間の遺産分割の協議により、303 号室を売却して、その売却代金と1,000 万円をBCで平等に分割する旨の遺産分割をすることができる。
3 BC間の遺産分割の協議により、303 号室をBが、1,000 万円をCがそれぞれ取得する旨の遺産分割が行われた。その後、BCは、その協議の全部を合意によって解除し、改めて、異なる内容の遺産分割の協議をすることはできない。
4 BC間の遺産分割の協議により、303 号室をBが、1,000 万円をCがそれぞれ取得する旨の遺産分割が行われた。その後、Dからの認知の訴えが認められ、DもAの共同相続人となった場合、BC間の遺産分割の協議はその効力を失い、Dを含めて再度の遺産分割の協議をしなければならない。

令和4年度 マンション管理士試験

正解:2

それでは、各肢を検討していこう。なお、問題は、令和4年4月1日現在施行されている法令等により出題されているが、正解及び解説は令和5年4月1日現在施行されている法令等に基づいて執筆する。

1 誤り。

共同相続人は、被相続人が遺言で禁じた場合又は分割をしない旨の契約をした場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の全部又は一部の分割をすることができる(907条1項)

協議による遺産分割は、共同相続人全員の合意により、法定相続分と異なる割合で分割することもでき、共同相続人の一人について何も相続しないことも可能である。

2 正しい。

協議による遺産分割は、分割の方法についても、共同相続人全員の合意により、選択できるので、本肢のような分割はできる。

3 誤り。

共同相続人の全員がすでに成立した遺産分割協議の全部または一部を合意により解除したうえで、改めて遺産分割協議することは、法律上当然には妨げられない。(判例)

したがって、本肢のようなことも可能である。

4 誤り。

相続の開始後認知によって相続人となった者が遺産の分割を請求しようとする場合において、他の共同相続人が既にその分割その他の処分をしたときは、価額のみによる支払の請求権を有する。(910条)

したがって、Dを含めて再度の遺産分割の協議をする必要はない。