今回のテーマは、「借地借家法(借家権)&民法」である。

それではさっそく、「マンション管理士試験」で出題された過去問にチャレンジしてみよう。

令和4年度 マンション管理士試験 〔問16〕

〔問 16〕 Aが所有する甲マンションの102 号室を賃貸期間2年と定めて居住用としてBに賃貸した場合に関する次の記述のうち、民法及び借地借家法の規定によれば、誤っているものはどれか。


1 AB間の契約が、定期建物賃貸借でない場合、Aが、Bに対し、期間満了の1年前から6ヵ月前までの間に更新をしない旨の通知又は条件を変更しなければ更新をしない旨の通知をしなかったときは、期間の定めのない賃貸借契約として更新される。
2 AB間の契約が、定期建物賃貸借である場合、Aが、Bに対し、期間満了の1年前から6ヵ月前までの間に期間満了により契約が終了する旨の通知をしなかったときでも、Bは期間満了による契約の終了をAに主張できる。
3 AB間の契約が、定期建物賃貸借でない場合、特約がない限り、Bは、Aに対し、契約期間内に解約の申入れをすることはできない。
4 AB間の契約が、定期建物賃貸借である場合、特約がなくとも、Aがその親族の介護をするため甲マンションの102 号室を使用する必要が生じて、Bに対し、解約の申入れをしたときは、当該定期賃貸借契約は、解約の申入れの日から1ヵ月を経過することによって終了する。

令和4年度 マンション管理士試験

正解:4

それでは、各肢を検討していこう。なお、問題は、令和4年4月1日現在施行されている法令等により出題されているが、正解及び解説は令和5年4月1日現在施行されている法令等に基づいて執筆する。

1 正しい。

建物の賃貸借について期間の定めがある場合において、当事者が期間の満了の1年前から6月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知又は条件を変更しなければ更新をしない旨の通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。ただし、その期間は、定めがないものとする。(借地借家法26条1項)

2 正しい。

建物の賃貸借において、期間が1年以上である場合には、建物の賃貸人は、期間の満了の1年前から6月前までの間に建物の賃借人に対し期間の満了により建物の賃貸借が終了する旨の通知をしなければ、その終了を建物の賃借人に対抗することができない。(同38条6項本文)

しかし、本規定は賃貸人に対してのものであり、賃借人は、このような通知がなかったときでも、期間満了による契約の終了を賃貸人に主張できる。

3 正しい。

期間の定めのある賃貸借では、中途解約できる旨の留保がない限り、当事者は、契約期間中に賃貸借契約を一方的に解約できない。(民法618条参照)

(期間の定めのない賃貸借の解約の申入れ)
第六百十七条 当事者が賃貸借の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合においては、次の各号に掲げる賃貸借は、解約の申入れの日からそれぞれ当該各号に定める期間を経過することによって終了する。
一 土地の賃貸借 一年
二 建物の賃貸借 三箇月
三 動産及び貸席の賃貸借 一日
2 収穫の季節がある土地の賃貸借については、その季節の後次の耕作に着手する前に、解約の申入れをしなければならない。
(期間の定めのある賃貸借の解約をする権利の留保)
第六百十八条 当事者が賃貸借の期間を定めた場合であっても、その一方又は双方がその期間内に解約をする権利を留保したときは、前条の規定を準用する。

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4 正しい。

定期建物賃貸借において、居住の用に供する建物の賃貸借(床面積が200平方メートル未満の建物に係るものに限る。)において、転勤、療養、親族の介護その他のやむを得ない事情により、建物の賃借人が建物を自己の生活の本拠として使用することが困難となったときは、建物の賃借人は、建物の賃貸借の解約の申入れをすることができる。この場合においては、建物の賃貸借は、解約の申入れの日から一月を経過することによって終了する。(借地借家法38条7項)

ただし、この規定は、賃借人に限られる。したがって、賃貸人からこのような解約の申し入れはできない