今回のテーマは、「借地借家法(借家権)」と「民法(贈与・使用貸借)」である。

それではさっそく、「マンション管理士試験」で出題された過去問にチャレンジしてみよう。

令和4年度 マンション管理士試験 〔問15〕

〔問 15〕 甲マンション302 号室を所有しているAが各種の契約をする場合に関する次の記述のうち、民法及び借地借家法(平成3年法律第90 号)の規定によれば、誤っているものはどれか。
1 Aが、Bとの間で、302 号室をBに贈与する旨の贈与契約を成立させるためには、書面によって契約をする必要がある。
2 Aが、Cとの間で、302 号室を無償でCに貸す旨の使用貸借契約を成立させるためには、302 号室の引渡しをする必要はない。
3 Aが、Dとの間で、302 号室を賃料月額10 万円でDに賃貸する旨の賃貸借契約を成立させるためには、302 号室の引渡しをする必要はない。
4 Aが、Eとの間で、302 号室を賃料月額10 万円でEに賃貸する旨の定期建物賃貸借の契約を成立させるためには、書面によって契約をする必要がある。

令和4年度 マンション管理士試験

正解:1

それでは、各肢を検討していこう。なお、問題は、令和4年4月1日現在施行されている法令等により出題されているが、正解及び解説は令和5年4月1日現在施行されている法令等に基づいて執筆する。

1 誤り。

贈与は、当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。(民法549条)

すなわち、贈与諾成契約であり、書面によって契約をする必要はない。

2 正しい。

使用貸借は、当事者の一方がある物を引き渡すことを約し、相手方がその受け取った物について無償で使用及び収益をして契約が終了したときに返還をすることを約することによって、その効力を生ずる。(民法593条)

使用貸借も諾成契約である。当事者の合意があれば、目的物の引き渡しがなくても成立する。

3 正しい。

賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うこと及び引渡しを受けた物を契約が終了したときに返還することを約することによって、その効力を生ずる。(民法601条)

賃貸借も諾成契約である。したがって、契約の成立に引き渡しは不要である。

4 正しい。

定期建物賃貸借は、公正証書による等書面によってしなければならない。(借地借家法38条1項)

なお、定期建物賃貸借が、書面の交付に代えて、その内容を記録した電磁的方法によってされたときは、書面を交付したものとみなされる。(同2項)

(強行規定)
第三十条 この節の規定に反する特約で建物の賃借人に不利なものは、無効とする。

(定期建物賃貸借)
第三十八条 期間の定めがある建物の賃貸借をする場合においては、公正証書による等書面によって契約をするときに限り、第三十条の規定にかかわらず、契約の更新がないこととする旨を定めることができる。(略)
2 前項の規定による建物の賃貸借の契約がその内容を記録した電磁的記録によってされたときは、その契約は、書面によってされたものとみなして、同項の規定を適用する。
略)

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