今回のテーマは、「民法の弁済」である。

それではさっそく、「マンション管理士試験」で出題された過去問にチャレンジしてみよう。

令和4年度 マンション管理士試験 〔問14〕

〔問 14〕 Aが所有する甲マンションの201 号室を賃料月額20 万円としてBに賃貸し、令和4年8月分の賃料をCがAに対して弁済しようとする場合に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、誤っているものはどれか。
1 AB間の賃貸借契約において、B以外の第三者の賃料支払を禁止していたときは、Cが弁済をするについて正当な利益を有していても、AはCの弁済を拒絶することができる。
2 AB間の賃貸借契約において、B以外の第三者の賃料支払を禁止又は制限していなかったときは、Cが弁済をするについて正当な利益を有していなくても、BがCに弁済の委託をし、これをあらかじめAに伝えていれば、AはCの弁済を拒絶することができない。
3 AB間の賃貸借契約において、B以外の第三者の賃料支払を禁止又は制限していなかった場合、Cが弁済をするについて正当な利益を有していても、Cの弁済がBの意思に反していることをAが知っていたときは、AはCの弁済を拒絶することができる。
4 AB間の賃貸借契約において、B以外の第三者の賃料支払を禁止又は制限していなかった場合、Cが弁済をするについて正当な利益を有していなくても、Cの弁済がBの意思に反していることをAが知らなかったときは、AはCの弁済を受領することができる。

令和4年度 マンション管理士試験

正解:3

それでは、各肢を検討していこう。なお、問題は、令和4年4月1日現在施行されている法令等により出題されているが、正解及び解説は令和5年4月1日現在施行されている法令等に基づいて執筆する。

1 正しい。

債務の弁済は、第三者もすることができる(474条1項)が、当事者が第三者の弁済を禁止し、若しくは制限する旨の意思表示をしたときは、適用しない。(同4項後段)
弁済は不可。たとえ「弁済をするについて正当な利益を有する第三者」であっても弁済できない

2 正しい。

弁済をするについて正当な利益を有する者でない第三者は、債権者の意思に反して弁済をすることができない。(474条3項本文)ただし、その第三者が債務者の委託を受けて弁済をする場合において、そのことを債権者が知っていたときは、この限りでない。(同ただし書)→弁済は有効

3 誤り。

弁済をするについて正当な利益を有する第三者は、債務者の意思に反して弁済をすることができる。(474条2項本文の反対解釈)

したがって、Cの弁済がBの意思に反していることをAが知っていたときでも、AはCの弁済を拒絶することができない。弁済は有効

4 正しい。

弁済をするについて正当な利益を有する者でない第三者は、債務者の意思に反して弁済をすることができない474条2項本文)が、債務者の意思に反することを債権者が知らなかったときは、この限りでない。(同ただし書)
弁済は有効→債権者保護