今回のテーマは、「民法の意思表示」である。
それではさっそく、「マンション管理士試験」で出題された過去問にチャレンジしてみよう。
令和4年度 マンション管理士試験 〔問12〕
〔問 12〕 Aは、Bとの間で、甲マンションの1室である202 号室をBに売却する旨の売買契約を締結した。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、誤っているものはどれか。
1 Aは、本心では202 号室を売却するつもりはなく売買契約を締結した場合において、Bがそのことを知り、又は知ることができたときは、売買契約は無効となる。
2 Aは、本心では202 号室を売却するつもりはなかったが、借入金の返済が滞り差押えを受ける可能性があったため、Bと相談のうえ、Bに売却したことにして売買契約を締結したときは、売買契約は無効となる。
3 Bは、甲マンションの近くに駅が新設されると考えて202 号室を購入したが、そのような事実がなかったときは、Bが駅の新設を理由に購入したことがAに表示されていなくても、Bは売買契約を取り消すことができる。
4 Bは、知人のCによる詐欺により、202 号室を購入することを決め、Aと売買契約を締結した場合において、BがCによる詐欺を理由に売買契約を締結したことをAが知らず、かつ、知ることもできなかったときは、Bは売買契約を取り消すことができない。
令和4年度 マンション管理士試験
それでは、各肢を検討していこう。なお、問題は、令和4年4月1日現在施行されている法令等により出題されているが、正解及び解説は令和5年4月1日現在施行されている法令等に基づいて執筆する。
1 正しい。
意思表示は、表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。(93条1項本文)ただし、相手方がその意思表示が表意者の真意ではないことを知り、又は知ることができたときは、その意思表示は、無効とする。(同ただし書)
2 正しい。
相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする。(94条1項)
3 誤り。
意思表示をした動機に錯誤がある場合、表意者は、その動機が法律行為の基礎となっていることが意思表示の内容として相手方に表示(明示または黙示)されていたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。(95条1項2号、2項、判例)
したがって、Bが駅の新設を理由に購入したことがAに表示されていなければ、Bは売買契約を取り消すことができない。
4 正しい。
相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知り、又は知ることができたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。(96条2項)
なお、本ブログでは、本問で扱っている民法の論点について以下の通り取り上げている。併せて一読されることをおすすめしたい。