管理業務主任者とは

「管理業務主任者」とは、マンション管理業者が管理組合等に対して管理委託契約に関する重要事項の説明や管理事務報告を行う際に必要な国家資格者のことです。

「管理業務主任者」となるには、管理業務主任者試験に合格し、管理業務主任者として登録し、管理業務主任者証(以下「主任者証」という)の交付を受けることが必要です。

一般社団法人 マンション管理業協会

「管理業務主任者」を目指すなら、対策としては、まずは過去問を解いてみることである。それではさっそく、「管理業務主任者試験」で出題された過去問にチャレンジしてみよう。

今回のテーマは、民法の「委任」である。

令和4年度 管理業務主任者試験問題【問1】

【問 1 】 委任契約に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、最も適切なものはどれか。

1  受任者は、委任が終了した後に、遅滞なくその経過及び結果を報告すればよく、委任者の請求があっても委任事務の処理の状況を報告する義務はない。
2  受任者は、特約がなければ、委任者に対して報酬を請求することができない。
3  委任者は、受任者に不利な時期には、委任契約を解除することができない。
4  受任者が報酬を受けるべき場合、履行の中途で委任が終了したときには、受任者は、委任者に対し、既にした履行の割合に応じた報酬についても請求することはできない。

令和4年度 管理業務主任者試験問題 令和4年(2022年)12月4日
正解:2

それでは、各肢を検討していこう。なお、法令等は、令和4年4月1日現在で施行されているものによるものとする。

1 誤り。

受任者は、事務処理のために、以下の通り付随義務を負う。

  • 報告義務(645条)
(受任者による報告)
第六百四十五条 受任者は、委任者の請求があるときはいつでも委任事務の処理の状況を報告し、委任が終了した後は、遅滞なくその経過及び結果を報告しなければならない。

民法|e-Gov法令検索
  • 受取物の引渡義務(646条)
  • 受任者の金銭の消費についての責任(647条)

したがって、受任者は、委任者の請求があるときはいつでも委任事務の処理の状況を報告しなければならない。

2 正しい。

無償委任の原則(648条)

(受任者の報酬)
第六百四十八条 受任者は、特約がなければ、委任者に対して報酬を請求することができない。
(略)

民法|e-Gov法令検索

3 誤り。

任意解除

委任は当事者間の信頼関係を基礎に締結される契約である。そこで、相手方を信頼できなくなったときは、委任を終了することができるとするのが適当である。そこで、委任は、各当事者がいつでも解除することができる。(任意解除・651条1項)

(委任の解除)
第六百五十一条 委任は、各当事者がいつでもその解除をすることができる。
(略)

民法|e-Gov法令検索

任意解除した者の損害賠償義務

もっとも、解除された相手方の利益を保護する必要がある。そこで、以下の2つの場合には、任意解除した者は、相手方の損害を賠償する義務を負う。

  • 相手方に不利な時期に委任を解除したとき。(651条2項1号)
  • 委任者が受任者の利益(専ら報酬を得ることによるものを除く。)をも目的とする委任を解除したとき。(651条2項2号)
(委任の解除)
第六百五十一条 (略)
2 前項の規定により委任の解除をした者は、次に掲げる場合には、相手方の損害を賠償しなければならない。ただし、やむを得ない事由があったときは、この限りでない。
一 相手方に不利な時期に委任を解除したとき。
二 委任者が受任者の利益(専ら報酬を得ることによるものを除く。)をも目的とする委任を解除したとき。

民法|e-Gov法令検索

ただし、やむを得ない事由があったときは、任意解除した者は、相手方の損害を賠償する義務を負わない。(651条2項柱書ただし書)

したがって、委任契約自体はいつでも解除できる。

4 誤り。

2肢の通り、「受任者は、特約がなければ、委任者に対して報酬を請求することができない」が、報酬を受けるべき場合には、受任者の割合的報酬請求権が認められる。(648条3項)

すなわち、委任者の責めに帰することができない事由によって委任事務の履行をすることができなくなった場合(648条3項1号)、委任が履行の中途で終了した場合(648条3項2号)、受任者は、既にした履行の割合に応じて報酬を請求することができる。

(受任者の報酬)
第六百四十八条 (略)
3 受任者は、次に掲げる場合には、既にした履行の割合に応じて報酬を請求することができる。
一 委任者の責めに帰することができない事由によって委任事務の履行をすることができなくなったとき。
二 委任が履行の中途で終了したとき。

民法|e-Gov法令検索

したがって、受任者が報酬を受けるべき場合、履行の中途で委任が終了したときには、受任者は、委任者に対し、既にした履行の割合に応じた報酬についても請求することができる

(参考)C-Book 民法IV〈債権各論〉 改訂新版 東京リーガルマインド