本稿では、「マンションの管理の適正化の推進に関する法律」を「マンション管理適正化法」と称する。
今回のテーマは、「マンション管理適正化法による財産の分別管理」である。
それではさっそく、「令和4年度 管理業務主任者試験」で出題された過去問にチャレンジしてみよう。
令和4年度 管理業務主任者試験問題 【問 49】
【問 49】 修繕積立金等が金銭である場合における財産の分別管理に関する次の記述のうち、マンション管理適正化法によれば、最も不適切なものはどれか。
1 マンション管理業者は、マンションの区分所有者等から徴収された修繕積立金等金銭を収納・保管口座に預入し、当該収納・保管口座において預貯金として管理する方法による場合、マンションの区分所有者等から徴収される1 月分の修繕積立金等金銭以上の額につき有効な保証契約を締結していなければならない。
2 マンション管理業者は、保管口座又は収納・保管口座に係る管理組合等の印鑑、預貯金の引出用のカードその他これらに類するものを管理してはならない。ただし、管理組合に管理者等が置かれていない場合において、管理者等が選任されるまでの比較的短い期間に限り保管する場合は、この限りでない。
3 管理組合に管理者等が置かれていない場合には、マンション管理業者は、毎月、管理事務の委託を受けた当該管理組合のその月における会計の収入及び支出の状況に関する書面を作成し、対象月の属する当該管理組合の事業年度の終了の日から2 月を経過する日までの間、当該書面をその事務所ごとに備え置き、当該管理組合を構成するマンションの区分所有者等の求めに応じ、当該マンション管理業者の業務時間内において、これを閲覧させなければならない。
4 マンション管理業者は、管理組合から委託を受けて管理する修繕積立金等金銭を整然と管理する方法により、自己の固有財産及び他の管理組合の財産と分別して管理しなければならない。
令和4年度 管理業務主任者試験問題
それでは、各肢を検討していこう。
なお、問題は、2022年4月1日現在施行されている法令等により出題されているが、正解及び解説は2023年4月1日現在施行されている法令等に基づいて執筆する。
修繕積立金等が金銭である場合における財産の分別管理
修繕積立金等が金銭である場合は、以下の3種類の方法のうち、いずれかの方法で管理しなければならない。
以下、「マンション管理適正化法施行規則」を「規則」と称する。
イ方式(規則87条2項1号イ)
収納口座に、「管理費+修繕積立金」を預け入れ、その月の管理事務に要する費用を控除した上で、残額(「管理費の残額+修繕積立金」)を、翌月末までには保管口座に移し換える。
ロ方式(規則87条2項1号ロ)
収納口座に、「管理費のみ」を預け入れ、その月の管理事務に要する費用を控除した上で、残額(「管理費の残額のみ」)を、翌月末までに保管口座に移し換える。そして、修繕積立金は、収納口座を経由せずに、直接、保管口座に預け入れる。
ハ方式(規則87条2項1号ハ)
収納口座と保管口座を分けず、「収納・保管口座」という一つの口座で管理することを前提とする方式である。この方式では、「管理費+修繕積立金」を収納・保管口座に預け入れ、その月の管理事務に要する費用を控除した上で、残額「管理費の残額+修繕積立金」)を、そのままその口座で保管する。
1 誤り。
マンション管理業者は、マンションの区分所有者等から徴収される修繕積立金等金銭を収納・保管口座に預入し、当該収納・保管口座において、預貯金として管理する方法により管理する場合(上記ハ方式)、保証契約の締結は不要である。(規則87条3項)
2 正しい。
マンション管理業者は、上記イ方式からハ方式までに定める方法により修繕積立金等金銭を管理する場合にあっては、保管口座又は収納・保管口座に係る管理組合等の印鑑、預貯金の引出用のカードその他これらに類するものを管理してはならない。
ただし、管理組合に管理者等が置かれていない場合において、管理者等が選任されるまでの比較的短い期間に限り保管する場合は、この限りでない。(規則87条4項)
3 正しい。
マンション管理業者は、毎月、管理事務の委託を受けた管理組合のその月(対象月)における会計の収入及び支出の状況に関する書面を作成し、翌月末日までに、当該書面を当該管理組合の管理者等に交付しなければならない。
この場合において、当該管理組合に管理者等が置かれていないときは、当該書面の交付に代えて、対象月の属する当該管理組合の事業年度の終了の日から2か月を経過する日までの間、当該書面をその事務所ごとに備え置き、当該管理組合を構成するマンションの区分所有者等の求めに応じ、当該マンション管理業者の業務時間内において、これを閲覧させなければならない。(規則87条5項)
4 正しい。
マンション管理業者は、管理組合から委託を受けて管理する修繕積立金その他国土交通省令で定める財産については、整然と管理する方法として国土交通省令で定める方法により、自己の固有財産及び他の管理組合の財産と分別して管理しなければならない。(マンション管理適正化法76条)