今回のテーマは、「管理費の滞納」である。

それではさっそく、「管理業務主任者試験」で出題された過去問にチャレンジしてみよう。

令和4年度 管理業務主任者試験問題【問9】

【問 9 】 管理費の滞納に関する次の記述のうち、民法及び民事訴訟法によれば、最も適切なものはどれか。

1  管理組合が、管理費の滞納者に対し、滞納管理費の支払を内容証明郵便で請求した後、その時から6箇月を経過するまでの間に、再度、滞納管理費の支払を内容証明郵便で請求すれば、あらためて時効の完成猶予の効力が生じる。
2  管理費を滞納している区分所有者が死亡した場合、遺産分割によって当該マンションを相続した相続人が滞納債務を承継し、他の相続人は滞納債務を承継しない。
3  管理費の滞納者が、滞納額25万円の一部であることを明示し、管理組合に対し5万円を支払った場合には、残りの20万円については、時効の更新の効力を有する。
4  管理費の滞納者が行方不明になった場合には、管理組合は、当該滞納者に対し、滞納管理費の支払についての訴えを提起することができない。

令和4年度 管理業務主任者試験問題 令和4年(2022年)12月4日
正解:3

それでは、各肢を検討していこう。なお、法令等は、令和4年4月1日現在で施行されているものによるものとする。

1 誤り。

催告によって、時効の完成が猶予されている間にされた再度の催告は、時効の完成猶予の効力を有しない(民法150条2項)。

したがって、最初の催告の後6箇月以内に再び催告を行ったとしても、時効の完成猶予の効力は生じない。

(催告による時効の完成猶予)
第百五十条 催告があったときは、その時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。
2 催告によって時効の完成が猶予されている間にされた再度の催告は、前項の規定による時効の完成猶予の効力を有しない。

民法|e-GOV法令検索

2 誤り。

相続開始までの未納管理費等は可分債務となる。可分債務は、法律上当然に分割され、各共同相続人は、その相続分に応じて債務を負担する

3 正しい。

管理費を滞納している区分所有者の本肢の行為は、権利の承認にあたる。時効は、権利の承認があったときは、その時から新たにその進行を始める。(民法152条1項)

これにより、残りの20万円については、時効の更新の効力を有する。(新たに時効の進行が開始する。)

(承認による時効の更新)
第百五十二条 時効は、権利の承認があったときは、その時から新たにその進行を始める。
(略)

4 誤り。

訴えの提起は、訴状を裁判所に提出して行い、(民事訴訟法133条1項)訴状に問題がなければ、被告に訴状が送達される。(同138条1項)なお、被告が住所不明などの場合、公示送達によって訴状を送達することができる。

したがって、管理費の滞納者が行方不明であっても、裁判所に滞納管理費を請求する訴えを提起することはできる。

(訴え提起の方式)
第百三十四条 訴えの提起は、訴状を裁判所に提出してしなければならない。

(訴状の送達)
第百三十八条 訴状は、被告に送達しなければならない。

民事訴訟法|e-Gov法令検索

(参考)C-Book 民法I〈総則〉 改訂新版、C-Book 民法V〈親族・相続〉 改訂新版、2022年版 出る順管理業務主任者 分野別過去問題集 (東京リーガルマインド)