今回のテーマは、「管理費の滞納」である。

それでは、「令和3年度 管理業務主任者試験」で出題された過去問にチャレンジしてみよう。

令和3年度 管理業務主任者試験問題 【問 11】

【問11】管理費の滞納に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。

1 滞納者が、所有している専有部分を売却し、区分所有者でなくなった場合、その専有部分の買受人である区分所有者が滞納管理費債務を承継し、当該滞納者は滞納管理費債務を免れる。
2 滞納者が破産手続開始の決定を受けた場合でも、その決定だけでは、当該滞納者は管理費の支払義務を免れるわけではない。
3 滞納者が死亡し、その相続人全員が相続放棄した場合には、いずれの相続人も滞納管理費債務を負わない。
4 管理規約に管理費について遅延損害金の定めがない場合でも、民法に定める法定利率によって遅延損害金を請求することができる。

令和3年度 管理業務主任者試験問題

正解:1

本稿では、「建物の区分所有等に関する法律」を「区分所有法」と称する。

それでは、各肢を検討していこう。
なお、問題は、2021年4月1日現在施行されている法令等により出題されているが、正解及び解説は2023年6月14日現在施行されている法令等に基づいて執筆する。

1 誤り。

管理費債権は、債務者たる区分所有者の特定承継人に対して行うことができる。(区分所有法8条)

これは、当該滞納者(前区分所有者)の債務を免除するものではない。したがって、前区分所有者も特定承継人と共に滞納管理費債務を負うことになる。

2 正しい。

免責許可の決定が確定したときは、破産者は、破産手続による配当を除き、破産債権について、その責任を免れる。(破産法253条1項本文)

したがって、その決定だけでは、当該滞納者は管理費の支払義務を免れるわけではない。

3 正しい。

相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。(民法939条)

したがって、相続人全員が相続放棄した場合には、いずれの相続人も滞納管理費債務を負わない。

4 正しい。

金銭の給付を目的とする債務の不履行については、その損害賠償の額は、債務者が遅滞の責任を負った最初の時点における法定利率によって定める。(民法419条1項本文)

管理費は金銭の給付を目的とする債務であり、管理規約に管理費について遅延損害金の定めがない場合でも、民法に定める法定利率によって遅延損害金を請求することができる。