今回のテーマは、「譲渡所得」である。
それでは、「ファイナンシャル・プランニング技能検定 2級 学科試験(2022年度9月実施)」で出題された過去問にチャレンジしてみよう。
問題 49
個人が土地を譲渡した場合の譲渡所得に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
1.譲渡所得の金額の計算上、譲渡した土地の取得費が不明な場合には、譲渡収入金額の10%相当額を取得費とすることができる。
2.譲渡所得のうち、土地を譲渡した日の属する年の1月1日における所有期間が5年以下のものについては、短期譲渡所得に区分される。
3.土地売却時に生じた譲渡所得が長期譲渡所得に区分される場合、課税長期譲渡所得金額に対し、原則として、所得税(復興特別所得税を含む)15.315%、住民税5%の税率により課税される。
4.土地を譲渡する際に支出した仲介手数料は、譲渡所得の金額の計算上、譲渡費用に含まれる。
ファイナンシャル・プランニング技能検定 2級 学科試験(2022年度9月実施)
それでは、各肢を検討していこう。なお、法令等は、2022年10月1日現在で施行されているものに基づくものとする。
1 誤り。
譲渡所得の金額を計算するとき、取得費が不明な場合や、実際の取得費が収入金額の5%より少ない場合には、譲渡収入金額の5%を取得費とすることができる。(概算取得費)
2 正しい。
短期譲渡所得と長期譲渡所得の区分
総合課税となる場合(一般の資産)※ | 所有期間が5年以下 | 短期譲渡所得 | |
所有期間が5年超 | 長期譲渡所得 | ||
申告分離課税となる場合 | 土地・建物の場合 | 譲渡した年の1月1日において、保有期間が5年以下 | 短期譲渡所得 |
譲渡した年の1月1日において、保有期間が5年超 | 長期譲渡所得 | ||
株式等の場合 | ー | 上場株式等に係る譲渡所得 | |
一般株式等に係る譲渡所得 |
※ ゴルフ会員権、貴金属、事業用資産(土地建物等を除く)など
3 正しい。
土地・建物等の譲渡の税率
短期譲渡所得の税額=課税短期譲渡所得金額×39%(39.63%)
※所得税30%(30.63%)、住民税9%
長期譲渡所得の税額=課税長期譲渡所得金額×20%(20.315%)
※所得税15%(15.315%)、住民税5%
( )は復興税込みの税率
4 正しい。
主な譲渡費用
譲渡費用の主なものは次のとおりです。
(1)土地や建物を売るために支払った仲介手数料
(2)印紙税で売主が負担したもの
(3)貸家を売るため、借家人に家屋を明け渡してもらうときに支払う立退料
(4)土地などを売るためにその上の建物を取り壊したときの取壊し費用とその建物の損失額
(5)既に売買契約を締結している資産をさらに有利な条件で売るために支払った違約金
これは、土地などを売る契約をした後、その土地などをより高い価額で他に売却するために既契約者との契約解除に伴い支出した違約金のことです。
(6)借地権を売るときに地主の承諾をもらうために支払った名義書換料など
このように、譲渡費用とは売るために直接かかった費用をいいます。
したがって、修繕費や固定資産税などその資産の維持や管理のためにかかった費用、売った代金の取立てのための費用などは譲渡費用になりません。
国税庁ウエブサイト
(参考)’22~’23年版 最短合格2級FP技能士 (きんざい)、うかる! FP2級・AFP 王道テキスト 2022-2023年版 (日本経済新聞出版 )