今回のテーマは、「所得税の損益通算」である。

それでは、「ファイナンシャル・プランニング技能検定 2級 学科試験(2023年9月10日実施)」で出題された過去問にチャレンジしてみよう。

ファイナンシャル・プランニング技能検定 2級 学科試験(2023年9月10日実施)問題33

問題 33
所得税の損益通算に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。

1.終身保険の解約返戻金を受け取ったことによる一時所得の金額の計算上生じた損失の金額は、給与
所得の金額と損益通算することができる。
2.先物取引に係る雑所得の金額の計算上生じた損失の金額は、上場株式等に係る譲渡所得の金額と損
益通算することができる。
3.不動産所得の金額の計算上生じた損失の金額のうち、不動産所得を生ずべき業務の用に供する土地
の取得に要した負債の利子の額に相当する部分の金額は、事業所得の金額と損益通算することがで
きる。
4.業務用車両を売却したことによる譲渡所得の金額の計算上生じた損失の金額は、事業所得の金額と
損益通算することができる。

ファイナンシャル・プランニング技能検定 2級 学科試験(2023年9月10日実施)

正解:4

それでは、各肢を検討していこう。
2023年9月実施の問題は、2023年4月1日現在施行されている法令等により出題されているが、正解及び解説は2023年10月1日現在施行されている法令等に基づいて執筆する。

なお、本テーマについては、これまでにも取り上げている。↓
FP2級の過去問を解こう(2023年5月)「所得税の損益通算」

損益通算とは

損益通算とは、複数の所得の中で利益と損失がある場合に、損失の所得金額を利益の所得金額から差し引くことをいう。これによって、課税所得金額が減り、税額が少なくなる。

損益通算の対象となる所得(他の所得と損益通算できる)

・不動産所得 ・事業所得 ・山林所得 ・譲渡所得

これらの頭の文字をとって「ふじさんじょう(富士山上)」と覚えるとよい。

損失があっても損益通算できない所得(以下の所得がマイナスであっても、損益通算できない)

・配当所得 ・一時所得 ・雑所得

損益通算の対象外となる譲渡所得(内部通算はできるが、他の所得と損益通算できない)

  • 生活に必要でない一定の資産(ゴルフ会員権、別荘など)の譲渡損失
  • 不動産所得の損失のうち、土地の取得のための負債利子(建物の取得のための負債利子は損益通算可能)
  • 自己の居住用財産以外の土地、建物(賃貸用の土地・建物など)の譲渡による損失
  • 生活用動産(家具や衣類、自動車など)の譲渡損失
  • 株式等の譲渡損失は、他の株式等の譲渡所得と損益通算できる(内部通算)が、その後残った損失と他の所得の損益通算は不可
    例外)申告分離課税を選択した、上場株式等の配当所得との損益通算は可能

1 誤り。

一時所得の損失は、他の所得と損益通算できない。

2 誤り。

先物取引に係る雑所得の金額の計算上生じた損失の金額は、上場株式等に係る譲渡所得の金額と損益通算できない。

先物取引に係る雑所得等の課税の特例
居住者または国内に恒久的施設を有する非居住者が、一定の先物取引の差金等決済をした場合には、その先物取引に係る事業所得の金額、譲渡所得の金額および雑所得の金額の合計額(この合計額を「先物取引に係る雑所得等の金額」という。)については、他の所得と区分して、申告分離課税となる。

先物取引に係る雑所得等の金額」の計算上生じた損失の金額は、他の「先物取引に係る雑所得等の金額」との損益の通算は可能ですが、先物取引に係る雑所得等以外の所得の金額との損益通算はできない

(参考)No.1522 先物取引に係る雑所得等の課税の特例(国税庁Webサイト)

3 誤り。

不動産所得の損失のうち、土地の取得のための負債利子は、他の所得と損益通算できない

4 正しい。

損益通算の対象となる所得は、不動産所得事業所得山林所得譲渡所得に限られる。

そして、土地建物や株式等以外の資産を売ったときの譲渡所得は、給与所得や事業所得などの所得と合わせて総合課税の対象となる。
(参考)No.3152 譲渡所得の計算のしかた(総合課税)(国税庁のWebサイト)

業務用車両を売却したことによる譲渡所得の金額の計算上生じた損失の金額は、事業所得の金額と損益通算することができる。

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