今回のテーマは、「不動産の売買契約に係る民法の規定」である。
それでは、「ファイナンシャル・プランニング技能検定 2級 学科試験(2023年5月28日実施)」で出題された過去問にチャレンジしてみよう。
ファイナンシャル・プランニング技能検定 2級 学科試験(2023年5月28日実施)問題43
問題 43
不動産の売買契約に係る民法の規定に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。なお、特約については考慮しないものとする。
1.同一の不動産について二重に売買契約が締結された場合、譲受人相互間においては、所有権移転登記の先後にかかわらず、原則として、売買契約を先に締結した者が当該不動産の所有者となる。
2.売買の目的物である建物が、その売買契約の締結から当該建物の引渡しまでの間に、台風によって全壊した場合、売主の責めに帰することができない事由であるため、買主は、売主に対する建物代金の支払いを拒むことはできない。
3.不動産が共有されている場合、各共有者は、自己が有している持分を第三者に譲渡するときは、他の共有者全員の同意を得なければならない。
4.売買契約締結後、買主の責めに帰することができない事由により、当該契約の目的物の引渡債務の全部が履行不能となった場合、買主は履行の催告をすることなく、直ちに契約の解除をすることができる。
ファイナンシャル・プランニング技能検定 2級 学科試験(2023年5月28日実施)
それでは、各肢を検討していこう。
2023年5月実施の問題は、2022年10月1日現在施行されている法令等により出題されているが、正解及び解説は2023年4月1日現在施行されている法令等に基づいて執筆する。
なお、「不動産の売買契約」については、本ブログでも過去に取り上げている。
1 誤り。
同一不動産の二重譲渡
譲受人相互間では、原則として、先に登記したほうが所有権を取得する。
2 誤り。
当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができる。(民法536条1項)
危険負担とは、契約成立後、各債務が完全に履行される前に、一方の債務が当事者双方の責めに帰することができない事由によって履行不能となった場合に、反対債務の履行がどうなるかを扱うものである。そして、この制度では、反対債務の履行を拒絶することができるかどうかが問題となる。
本肢では、買主は、売主に対して建物代金の支払いを拒むことができる。
(債務者の危険負担等) 第五百三十六条 当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができる。 (略)
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3 誤り。
共有持分の譲渡・共有物の譲渡
共有持分を譲渡するときは、他の共有者の同意を得なくても単独で譲渡できる。
なお、共有物全体を譲渡するときは、共有者全員の同意が必要となる。
4 正しい。
債務の全部の履行が不能である場合には、債権者は、催告をすることなく、直ちに契約の解除をすることができる。(民法542条1項1号)
したがって、本肢では、買主は、履行の催告をすることなく、直ちに契約の解除をすることができる。
(催告によらない解除)
第五百四十二条 次に掲げる場合には、債権者は、前条の催告をすることなく、直ちに契約の解除をすることができる。
一 債務の全部の履行が不能であるとき。
(略)
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