今回のテーマは、「障害給付の計算」である。

それでは、「ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<応用編>(2024年1月28日実施)」で出題された過去問にチャレンジしてみよう。

ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<応用編>(2024年1月28日実施)【第1問】

《設 例》

建設業を営むX株式会社(以下、「X社」という)の代表取締役社長であるAさん(35歳)は、妻Bさん(35歳)、長男Cさん(8歳)および二男Dさん(3歳)との4人暮らしである。Aさんは高校卒業後、建設会社に就職したが、3年前に個人事業主として独立し、昨年、X社を設立した。X社は従業員数7名の会社であり、Aさん自身も現場で作業に従事していることから、Aさんは、自身がケガ等により障害を負った際に、社会保険制度から受けることができる給付について知りたいと思っている。
そこで、Aさんは、ファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。
Aさんの家族に関する資料は、以下のとおりである。
〈Aさんの家族に関する資料〉
(1) Aさん(本人)
・1988年11月17日生まれ
・公的年金の加入歴
2007年4月から2021年3月までの期間(168月)は、厚生年金保険の被保険者で
ある(過去に厚生年金基金の加入期間はない)。
2021年4月から2022年12月までの期間(21月)は、国民年金の第1号被保険者
として保険料を納付している。
2023年1月から現在に至るまで厚生年金保険の被保険者である。
・全国健康保険協会管掌健康保険の被保険者である。
(2) Bさん(妻)
・1988年7月6日生まれ
・公的年金の加入歴
2007年4月から現在に至るまで厚生年金保険の被保険者である。
・全国健康保険協会管掌健康保険の被保険者である。
・2007年4月から現在に至るまで雇用保険の一般被保険者である。
(3) Cさん(長男)
・2015年9月5日生まれ
(4) Dさん(二男)
・2020年3月17日生まれ
※妻Bさん、長男Cさんおよび二男Dさんは、Aさんと同居し、Aさんによって生
計を維持されているものとする。
※妻Bさん、長男Cさんおよび二男Dさんは、現在および将来においても、公的年
金制度における障害等級に該当する障害の状態にないものとする。
※上記以外の条件は考慮せず、問に従うこと。

《問53》 仮に、Aさんが労働者災害補償保険(以下、「労災保険」という)に特別加入しており、現時点(2024年1月28日)において業務災害により労働者災害補償保険法における障害等級1級の障害補償年金の受給権を取得し、かつ、公的年金制度における障害等級1級の障害厚生年金および障害基礎年金の受給権を取得した場合、Aさんに係る障害給付について、次の①~③に答えなさい。〔計算過程〕を示し、〈答〉は円単位とすること。また、年金額の端数処理は、円未満を四捨五入すること。
なお、計算にあたっては、下記の〈条件〉および〈資料〉に基づき、年金額は、2023年度価額に基づいて計算するものとする。
① 障害基礎年金の年金額はいくらか。
② 障害厚生年金の年金額(本来水準による価額)はいくらか。
③ 障害補償年金の年金額はいくらか。なお、特別支給金は考慮しないものとする。
〈条件〉
(1) 厚生年金保険の被保険者期間
・総報酬制導入後の被保険者期間:180月
(2) 平均標準報酬額(2023年度再評価率による額)
・総報酬制導入後の平均標準報酬額:40万円
(3) 報酬比例部分の給付乗率
・総報酬制導入前の乗率:1,000分の7.125
・総報酬制導入後の乗率:1,000分の5.481
(4) 加給年金額(要件を満たしている場合のみ加算すること)
22万8,700円
(5) 子の加算額(要件を満たしている場合のみ加算すること)
1人目から□□□人目:22万8,700円
□□□人目以降 :7万6,200円
※「□□□」は、問題の性質上、伏せてある。
(6) 給付基礎日額
1万4,000円

ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<応用編>(2024年1月28日実施)【第1問】改題

正解:①1,451,150円 ②1,050,850円 ③3,198,860円

① 障害基礎年金の額は、795,000円(2級)である。
Aさんは障害等級1級なので、2級の1.25倍の額となる。
したがって、795,000円×1.25=993,750円(1)
さらに、子の加算額が加算される。子は2名なので、
228,700円×2=457,400円(2)
(1)+(2)=1,451,150円

② 障害厚生年金の額は、2,3級は報酬比例部分の計算方法により計算する。
$400,000円×\frac{5.481}{1000}×300月=657,720円$

加入歴によれば、168月+21月+12月=201月である。なお、障害認定日の属する月後における厚生年金被保険者期間であった期間は計算の基礎としない。また、被保険者の月数が300月に満たないとき300月とみなして計算する

Aさんは障害等級1級なので、2級の1.25倍の額となる。さらに、配偶者の加給年金額が加算される。

657,720円×1.25+228,700円=1,050,850円

③ 「障害補償年金」は労災年金であり、老齢年金とは仕組みが異なることを理解しよう。
Aさんは障害等級1級で、障害基礎年金及び障害厚生年金を受給している。
したがって、14,000円×313日×0.73=3,198,860円

(参考)

障害(補償)等年金


厚生労働省・障害(補償)等給付パンフレットより抜粋
(労災年金と厚生年金等の調整率)
労災年金障害補償年金
障害年金
遺族補償年金
遺族年金
社会保険の種類併給される年金給付
厚生年金及び国民年金障害厚生年金及び障害基礎年金0.73
遺族厚生年金及び遺族基礎年金0.80
厚生年金障害厚生年金0.83
遺族厚生年金0.84
国民年金障害基礎年金0.88
遺族基礎年金0.88

厚生労働省のウェブサイトより抜粋「障害(補償)年金や遺族(補償)年金などの労災年金と厚生年金の両方を受け取ることはできるのでしょうか。」