今回のテーマは、「外貨建て金融商品の課税関係」である。
それでは、「ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<基礎編>(2023年9月10日実施)」で出題された過去問にチャレンジしてみよう。
ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<基礎編>(2023年9月10日実施)《問22》
《問22》 個人(居住者)が購入等する外貨建て金融商品の課税関係に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
1) 外国銀行の在日支店に預け入れた外貨預金の利子は、利子所得として総合課税の対象となる。
2) 国内に所在するX銀行に預け入れた米ドル建ての定期預金が満期となり、満期日にその元本部分を国内のY銀行に米ドルのまま預け入れた場合、その元本部分に係る為替差益は認識しないでよいとされる。
3) 国内に所在する証券会社を通じて売却した外貨建てMMFについて為替差益が生じた場合、当該為替差益は、譲渡所得として申告分離課税の対象となる。
4) 国内に所在する証券会社を通じて支払われた外国利付債券(国外特定公社債)の利子は、利子所得として申告分離課税の対象となり、外国所得税が課されている場合は、確定申告により外国税額控除の適用を受けることができる。
ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<基礎編>(2023年9月10日実施)
それでは、各肢を検討していこう。
なお、問題は、2023年4月1日現在施行されている法令等により出題されているが、正解及び解説は2023年10月1日現在施行されている法令等に基づいて執筆する。
1 誤り。
外貨預金の利息部分については、円預金と同様、源泉分離課税※が適用される。
※2013年1月1日から2037年12月31日までの25年間、20.315%の源泉分離課税(国税15.315%、地方税5%)となる。
なお、為替差益※が生じた場合は、雑所得として確定申告が必要となる場合がある。
※預入時よりも円安の為替相場で外貨を円貨に換金すると、為替差益を得ることができる。
(参考)外貨預金のしくみ(三菱UFJ銀行のWebサイト)
2 正しい。
外国通貨で表示された預貯金を受け入れる金融機関を相手方とする当該預貯金に関する契約に基づき預入が行われる当該預貯金の元本に係る金銭により引き続き同一の金融機関に同一の外国通貨で行われる預貯金の預入は、上記の外貨建取引には該当しないものとされています(所得税法施行令第167条の6第2項)。
(参考)外貨建預貯金の預入及び払出に係る為替差損益の取扱い(国税庁Webサイト)
したがって、為替差益を認識する必要はない。
3 正しい。
国内に所在する証券会社を通じて売却した外貨建てMMFについて為替差益が生じた場合、当該為替差益は、譲渡所得として申告分離課税の対象となる。
外貨建MMFの譲渡(売却)・償還により発生した譲渡(売却)・償還差益は為替差益含め譲渡所得とし申告分離課税※が適用されます。
なお、分配金は利子所得となり、分配金は月末再投資の際に、源泉徴収※された後の金額で再投資されます。
※2013年1月1日から2037年12月31日までは復興特別所得税の対象となるため、20.315%(国税15.315%、地方税5%)の税率となります。
(参考)外貨建MMFの税金の取扱いについて(SBI証券のWebサイト)
4 正しい。
国内に所在する証券会社を通じて支払われた外国利付債券(国外特定公社債)の利子は、利子所得として申告分離課税の対象となり、外国所得税が課されている場合は、確定申告により外国税額控除の適用を受けることができる。
外国債券の種類と課税方法(特定公社債等)
利子 | 償還差益 | 売却益 | ||
割引債(ゼロ・クーポン債など) | ー | 譲渡所得 20%申告分離課税※ (所得税15% 住民税5%) 「源泉徴収あり口座」は申告不要も選択可能 | ||
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利付債(外貨建ての国債や社債) | 利子所得 20%源泉徴収※ 申告不要または申告分離課税の選択※2 | |||
円建て外債 (サムライ債) | 世銀債等※1 | |||
その他 | ||||
一部の発展途上国の債券 | 確定申告により、みなし外国税額控除の適用有り |
※2特定公社債に該当する外国公社債の利子は、確定申告により外国税額控除の適用があります。
※2013年1月1日から2037年12月31日までは復興特別所得税の対象となるため、20.315%(国税15.315%、地方税5%)の税率となる。(筆者注)
(引用)外国債券:債券の税金(大和証券のWebサイト)