今回のテーマは、「中小企業退職金共済制度」である。
それでは、「ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<基礎編>(2023年9月10日実施)」で出題された過去問にチャレンジしてみよう。
ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<基礎編>(2023年9月10日実施)《問6》
《問6》 中小企業退職金共済制度(以下、「中退共」という)に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。なお、本問において、事業主には同居の親族のみを使用する事業主等は含まないものとし、従業員には短時間労働者は含まないものとする。
1) 合併等に伴い、初めて中退共の退職金共済契約を締結し、確定拠出年金の企業型年金から中退共に資産の移換を行う場合、新規加入者の掛金について国の助成を受けることはできない。
2) 合併等に伴い、被共済者を加入者とする確定拠出年金の企業型年金を実施することになった場合、被共済者の同意に基づき、合併等を行った日から1年以内で、かつ、退職金共済契約を解除した日の翌日から3カ月以内に申し出ることで、中退共の解約手当金に相当する額を当該企業型年金へ資産移換することができる。
3) 退職金の額は、被共済者に係る掛金月額と掛金納付月数に応じて定められている基本退職金に、運用収入の状況等に応じて定められる付加退職金を加えた額となる。
4) 退職した日において60歳以上で、かつ、退職金の額が150万円以上であること等の要件を満たす場合、退職金は5年から10年の間の希望する分割支給期間(1年単位)で受給することができる。
ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<基礎編>(2023年9月10日実施)
それでは、各肢を検討していこう。
なお、問題は、2023年4月1日現在施行されている法令等により出題されているが、正解及び解説は2023年10月1日現在施行されている法令等に基づいて執筆する。
1 正しい。
新規加入した場合、加入後4カ月目から1年間、掛金月額の2分の1(従業員ごとに上限5,000円)を国が助成する。
ただし、合併等に伴い、初めて中退共の退職金共済契約を締結し、確定拠出年金の企業型年金から中退共に資産の移換を行う場合、新規加入者の掛金について国の助成を受けることはできない。
(中小企業退職金共済法施行規則69条の11第5項)
2 正しい。
合併等に伴い、被共済者を加入者とする確定拠出年金の企業型年金を実施することになった場合、被共済者の同意に基づき、合併等を行った日から1年以内で、かつ、退職金共済契約を解除した日の翌日から3カ月以内に申し出ることで、中退共の解約手当金に相当する額を当該企業型年金へ資産移換することができる。
(中小企業退職金共済法施行規則69条の16)
3 正しい。
退職金の額は、被共済者に係る掛金月額と掛金納付月数に応じて定められている基本退職金に、(掛金月数が43月以上の場合)運用収入の状況等に応じて定められる付加退職金を加えた額となる。(中小企業退職金共済法10条2項)
掛金月数 | 支給内容 |
---|---|
11月以下(12月未満) | 支給されない |
12月以上23月未満 | 掛金の総額を下回る額 |
24月以上42月未満 | 掛金の総額に相当する額 |
43月以上 | 運用収入の状況等などにより付加退職金が加算 |
4 誤り。
5年間の分割払いは、60歳以上、かつ、退職金の額が80万円以上。
10年間分割払いは150万円以上。
なお、60歳未満は分割払いを選択することはできない。
(中小企業退職金共済法12条4項、中小企業退職金共済法施行規則22条)
したがって、5年から10年の間の希望する分割支給期間(1年単位)ではない。