今回のテーマは、「不動産所得・事業所得」である。

それでは、「ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<基礎編>(2023年5月28日実施)」で出題された過去問にチャレンジしてみよう。

ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<基礎編>(2023年5月28日実施)問26

《問26》 居住者に係る所得税の不動産所得および事業所得に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。なお、記載のない事項については考慮しないものとする。

1) 2022年中に、国外中古建物について不動産所得の金額の計算上生じた損失の金額があり、その損失の額を上回る耐用年数を簡便法により計算した減価償却費の額がある場合、損失の額は国内不動産から生じる不動産所得の金額と内部通算することができるが、不動産所得以外の所得の金額と損益通算することはできない。
2) 不動産業者が販売の目的で取得した建物を一時的に貸し付けたことによる所得は、事業所得となり、事業所得の金額の計算上、その建物について減価償却資産に準じて計算した償却費の額に相当する金額を必要経費に算入することができる。
3) 不動産の貸付が事業的規模でない場合、所有する賃貸アパートを取り壊したことにより生じた損失の金額のうち、不動産所得の金額から引ききれない金額は、不動産所得以外の所得の金額と損益通算することができる。
4) 居住の用に供していた自宅の建物を取り壊し、その敷地上に賃貸アパートを建築して貸付の用に供した場合、自宅の取壊しに要した費用は、不動産所得の金額の計算上、必要経費に算入することができる。

ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<基礎編>(2023年5月28日実施)

正解:2

それでは、各肢を検討していこう。
2023年5月実施の問題は、2022年10月1日現在施行されている法令等により出題されているが、正解及び解説は2023年4月1日現在施行されている法令等に基づいて執筆する。

1 誤り。

国外中古建物の不動産所得の損益通算等の特例

令和3年以後の各年において、国外中古建物の不動産所得を有する場合において、その年分の不動産所得の金額の計算上生じた損失の金額がある場合、そのうち、耐用年数を「簡便法」により計算した国外中古建物の減価償却費に相当する部分の金額については、生じなかったものとみなされる

これにより、その損失の金額については、国内にある不動産から生じる不動産所得との内部通算(いわゆる所得内通算)および不動産所得以外の所得との損益通算はできない
(参考)「No.1391 不動産所得が赤字のときの他の所得との通算」国税庁ホームページ

2 正しい。

不動産業者が所有する販売目的不動産の一時貸しによる収入は事業所得である。
この場合において、その貸し付けた不動産が建物その他使用又は時の経過により減価する資産であるときは、当該資産につき減価償却資産に準じて計算した償却費の額に相当する金額を当該事業所得の金額の計算上必要経費に算入することができるものとする。
(参考)「法第26条《不動産所得》関係」国税庁ホームページ

3 誤り。

不動産の貸付が事業的規模でない場合、賃貸用固定資産の取壊し、除却などの資産損失については、その年分の資産損失を差し引く前の不動産所得の金額を限度として必要経費に算入される。
すなわち、その損失によって不動産所得の金額が赤字になっても、その赤字になった金額をほかの所得から差し引くことはできない。

4 誤り。

賃貸アパートなどの新築を目的として自己の居住用家屋を取り壊した場合には、その取り壊しはいわゆる生活用資産の処分に当たる。そのため、たとえ今後の不動産所得を得るためのものであっても、その取り壊しにより生じた損失は家事上の経費及びこれに関連する経費として取り扱われることになる。
  したがってこの場合には、建物の取壊費用や取り壊しで生じた資産損失は、不動産所得の金額の計算上必要経費とすることができない。新築した賃貸用固定資産の取得価額に含めることもできない。雑損控除の適用も受けられない。