今回は、「遺言」について、過去問で問われた内容を中心にポイントを取り上げる。

遺言とは

遺言とは、遺言者の死亡後の法律関係を定める最終意思の表示である。遺言者の死亡によりその法律効果が発生する。なお、遺言は相手方のない単独行為である。(比較:死因贈与・・贈与者の死亡によって効力を生ずる贈与者と受贈者との贈与の契約)

遺贈・・遺言による財産の移転のこと。

遺贈者・・遺言者のこと。

受遺者・・遺言により財産を取得する人。

遺言事項は民法で限定的に定められている。(民法960条以降)

(遺言の方式)

第九百六十条 

遺言は、この法律に定める方式に従わなければ、することができない。

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遺言の出題ポイント

  • 満15歳以上の意思能力を有する者は、遺言を作成できる。
  • 2通以上の遺言を作成していた場合、日付の新しいほうの遺言が有効となる。
  • 遺留分を侵害する遺言も有効である
  • 遺言の一部または全部の撤回は自由である。この場合、先に作成した遺言と同じである必要はない
  • 遺言者が故意に遺言を破棄したときは破棄した部分について撤回したものとみなされる。ただし公正証書遺言を除く。
  • 遺言者は遺言により遺言執行者を選任できる。
  • 遺言執行者に特定の資格は不要で、原則誰でもなれる。なお、未成年者及び破産者は、遺言執行者となることができない。(民法1009条)
  • 遺言者とその配偶者が同一の証書で共同遺言をすることはできない。

遺言の種類

自筆証書遺言公正証書遺言秘密証書遺言
特徴遺言者本人が全文(財産目録はパソコンで作成、通帳のコピーも可)、日付(年月日が特定できることが必要)、氏名自書し押印(認印、拇印も可)遺言者が口述した内容を公証人が筆記して、遺言者、証人に読み聞かせて作成。
原本は公証役場に保管される。
作成には目的となる財産の価額に応じた手数料が必要。
遺言者が証書に署名押印して証書を封じて封印する。遺言者が保管。
代筆、ワープロ等の作成も可。
証人の立会い不要証人2人以上(ただし、未成年者、推定相続人、受遺者、及びその配偶者・直系血族は不可)公証人1人及び証人2人以上(ただし、未成年者、推定相続人、受遺者、及びその配偶者・直系血族は不可
検認。ただし、法務局(遺言書保管所)で保管されている場合は不要。不要
遺言の種類

検認とは・・遺言書の偽造等を防ぐための証拠保全手続き。自書証書遺言(法務局(遺言書保管所)で保管しない場合)、秘密証書遺言は相続の開始後に、遅滞なく家庭裁判所に提出して検認を請求しなければならない。なお、遺言の有効・無効を判断する手続きではない。

それでは、これまで見てきたポイントを過去問で確認してみよう。

過去問にチャレンジ

問題 56
民法上の遺言に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。

1.遺言は、満18歳以上の者でなければすることができない。
2.公正証書遺言を作成した者は、その遺言を自筆証書遺言によって撤回することはできず、公正証書遺言によってのみ撤回することができる。
3.遺言による相続分の指定または遺贈によって、相続人の遺留分が侵害された場合、その遺言は無効となる。
4.公正証書遺言を作成する場合において、遺言者の推定相続人は、証人として立ち会うことができない。

2022年5月試験 2級学科試験

正解:4

1 満15歳以上。
2 先に作成した遺言と同じである必要はない。
3 有効である。
4 正しい。

【第2問】 次の各文章((31)~(60))の( )内にあてはまる最も適切な文章、語句、数 字またはそれらの組合せを1)~3)のなかから選び、その番号を解答用紙にマークしなさい。

(59) 公正証書遺言は、証人2人以上の立会いのもと、遺言者が遺言の趣旨を公証人に口 授し、公証人がそれを筆記して作成される遺言であり、相続開始後に( ① )における検認手続が( ② )である。

1) ① 公証役場 ② 必要
2) ① 家庭裁判所 ② 必要
3) ① 家庭裁判所 ② 不要

2022年5月試験 3級学科試験

正解:3

公正証書遺言は、家庭裁判所による検認は不要である。

参考文献)’22~’23年版 最短合格2級FP技能士(きんざい)、史上最強のFP2級AFPテキスト22-23年版(ナツメ社 )