宅地建物取引士資格試験(宅建試験)で出題された民法の過去問にチャレンジしてみよう。

今回のテーマは、「地上権と賃借権」である。

令和4年度 宅地建物取引士資格試験 問題

【問 8】 AがB所有の甲土地を建物所有目的でなく利用するための権原が、①地上権である場合と②賃借権である場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。なお、AもBも対抗要件を備えているものとする。

1 ①でも②でも、特約がなくても、BはAに対して、甲土地の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。
2 CがBに無断でAから当該権限を譲り受け、甲土地を使用しているときは、①でも②でも、BはCに対して、甲土地の明渡しを請求することができる。
3 ①では、Aは当該権原を目的とする抵当権を設定することができるが、②では、Aは当該権原を目的とする抵当権を設定することはできない。
4 Dが甲土地を不法占拠してAの土地利用を妨害している場合、①では、Aは当該権原に基づく妨害排除請求権を行使してDの妨害の排除を求めることができるが、②では、AはDの妨害の排除を求めることはできない。

令和4年度 宅地建物取引士資格試験 令和4年10月16日
正解:3

それでは、各肢を検討していこう。なお、法令等は、令和4年4月1日現在で施行されているものによるものとする。

1 誤り。

賃借権について、賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。(606条本文)

一方、地上権では、地上権者は、他人の土地において工作物又は竹木を所有するため、その土地を使用する権利を有する。(265条)

貸主に修繕する義務はない。物権である地上権においては、貸主は地上権者の土地使用を忍容すべき消極的な義務を負うにとどまり、賃貸人のように土地を使用させる積極的な義務を負うわけでないことによる。

もっとも建物所有目的の地上権には借地借家法の修正がなされる。(借地借家法2条1号)

(地上権の内容)
第二百六十五条 地上権者は、他人の土地において工作物又は竹木を所有するため、その土地を使用する権利を有する。

(賃貸人による修繕等)
第六百六条 賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。ただし、賃借人の責めに帰すべき事由によってその修繕が必要となったときは、この限りでない。
(略)

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2 誤り。

譲渡性の問題。地上権では、貸主の承諾の有無を問わず譲渡可能である一方、賃借権では、賃貸人の承諾が必要である。(612条1項)

(賃借権の譲渡及び転貸の制限)
第六百十二条 賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。
(略)

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3 正しい。

民法が認める抵当権の目的物は、不動産のほか、地上権(369条2項前段)、永小作権である。

したがって、賃借権には抵当権は設定できない。

(抵当権の内容)
第三百六十九条 抵当権者は、債務者又は第三者が占有を移転しないで債務の担保に供した不動産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。
2 地上権及び永小作権も、抵当権の目的とすることができる。この場合においては、この章の規定を準用する。

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4 誤り。

地上権は、所有権その他の物権と同様に、登記をすることによって第三者に対抗できる。(177条)

そして、物権的請求権が当然に認められ、結果として、妨害排除請求権が行使できる。

一方、不動産の賃借人は、対抗要件を備えた場合には、目的の不動産の占有を妨害している第三者に対しては、妨害の停止の請求(妨害排除請求)ができる。(605条の4第1号)

(不動産の賃借人による妨害の停止の請求等)
第六百五条の四 不動産の賃借人は、第六百五条の二第一項に規定する対抗要件を備えた場合において、次の各号に掲げるときは、それぞれ当該各号に定める請求をすることができる。
一 その不動産の占有を第三者が妨害しているとき その第三者に対する妨害の停止の請求
(略)

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(参考)C-Book 民法II〈物権〉 改訂新版、C-Book 民法IV〈債権各論〉 改訂新版 (東京リーガルマインド)