宅地建物取引士資格試験(宅建試験)で出題された民法の過去問にチャレンジしてみよう。

今回のテーマは、「相続(相続放棄、遺留分の放棄)」である。

令和4年度 宅地建物取引士資格試験 問題

【問 2】相続に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、誤っているものはどれか。
1 被相続人の生前においては、相続人は、家庭裁判所の許可を受けることにより、遺留分を放棄することができる。
2 家庭裁判所への相続放棄の申述は、被相続人の生前には行うことができない。
3 相続人が遺留分の放棄について家庭裁判所の許可を受けると、当該相続人は、被相続人の遺産を相続する権利を失う。
4 相続人が被相続人の兄弟姉妹である場合、当該相続人には遺留分がない。

令和4年度 宅地建物取引士資格試験 令和4年10月16日
正解:3

それでは、各肢を検討していこう。なお、法令等は、令和4年4月1日現在で施行されているものによるものとする。

1 正しい。

相続の開始前における遺留分の放棄は、家庭裁判所の許可が必要とされている。(1049条1項)

2 正しい。

相続人は、原則として、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。(915条1項本文)

すなわち、相続放棄は、被相続人の生前に行うことができない。

3 誤り。

遺留分の放棄は、相続の放棄ではないので、相続人としての地位は失わない

すなわち、遺留分の放棄は、相続権を失わずに遺留分権のみを喪失する方法として認められている。

4 正しい。

遺留分を有する者(遺留分権利者)は、兄弟姉妹以外の相続人、すなわち、

  1. 子(その代襲者、再代襲者を含む)
  2. 直系尊属
  3. 配偶者

である。(1042条1項)兄弟姉妹には遺留分は認められない。

相続の承認又は放棄をすべき期間)
第九百十五条 相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。
(略)

(遺留分の帰属及びその割合)
第千四十二条 兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、次条第一項に規定する遺留分を算定するための財産の価額に、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める割合を乗じた額を受ける。
一 直系尊属のみが相続人である場合 三分の一
二 前号に掲げる場合以外の場合 二分の一
(略)

(遺留分の放棄)
第千四十九条 相続の開始前における遺留分の放棄は、家庭裁判所の許可を受けたときに限り、その効力を生ずる。
(略)

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(参考)C-Book 民法V〈親族・相続〉 改訂新版 (東京リーガルマインド)