賃貸不動産経営管理士は、賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律において、賃貸住宅管理業務を行ううえで設置が義務付けられている「業務管理者」の要件とされた国家資格です。

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さて、今回のテーマは、「相続」である。

それでは、「賃貸不動産経営管理士」試験で出題された民法の過去問にチャレンジしてみよう。

【問 24】 Aを貸主、Bを借主とする建物賃貸借契約においてBが死亡した場合に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。ただし、それぞれの選択肢に記載のない事実及び特約はないものとする。

1 Bの内縁の妻Cは、Bとともに賃貸住宅に居住してきたが、Bの死亡後(Bには相続人が存在するものとする。)、Aから明渡しを求められた場合、明渡しを拒むことができない。

2 Bの内縁の妻Cは、Bとともに賃貸住宅に居住してきたが、Bの死亡後(Bには相続人が存在しないものとする。)、Aから明渡しを求められた場合、明渡しを拒むことができない。


3 Aが地方公共団体の場合で、賃貸住宅が公営住宅(公営住宅法第2条第2号)であるときに、Bが死亡しても、その相続人は当然に使用権を相続によって承継することにはならない。


4 Bが死亡し、相続人がいない場合、賃借権は当然に消滅する。 

賃貸不動産経営管理士試験 令和3年11月21日 問題
正解:3

それでは、各肢を検討していこう。なお、2022年4月1日現在の法令に基づいているものとする。

問題中の法令等に関する部分は、令和4年4月1日現在で施行されている規定(関係機関による関連告示、通達等を含む。)に基づいて出題する。

令和4年度 賃貸不動産経営管理士試験実施要領

1 誤り。

相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する(896条本文)が、内縁の妻は相続人とはならない。しかし、この内縁の妻は、相続人の賃借権を援用して、賃貸人に対して、当該家屋に居住する権利を主張することができる。(最判昭42.2.21)

したがって、Cは明渡しを拒むことができる。

(相続の一般的効力)
第八百九十六条 相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。

民法・e-Gov法令検索
家屋賃借人の内縁の妻は、賃借人が死亡した場合には、相続人の賃借権を援用して賃貸人に対し当該家屋に居住する権利を主張することができるが、相続人とともに共同賃借人となるものではない。

最判昭42.2.21

2 誤り。

居住の用に供する建物の賃借人が相続人なしに死亡した場合において、その当時婚姻又は縁組の届出をしていないが、建物の賃借人と事実上夫婦又は養親子と同様の関係にあった同居者があるときは、その同居者は、建物の賃借人の権利義務を承継する。(借地借家法36条1項本文)

したがって、Cは明渡しを拒むことができる。

(居住用建物の賃貸借の承継)
第三十六条 居住の用に供する建物の賃借人が相続人なしに死亡した場合において、その当時婚姻又は縁組の届出をしていないが、建物の賃借人と事実上夫婦又は養親子と同様の関係にあった同居者があるときは、その同居者は、建物の賃借人の権利義務を承継する。(略)

借地借家法 - e-Gov法令検索

3 正しい。

 公営住宅の入居者が死亡した場合に、その相続人は、当該公営住宅を使用する権利を当然に承継するものではない。(最判平2.10.18)

したがって、Bが死亡しても、その相続人は当然に使用権を相続によって承継することにはならない。

 公営住宅の入居者が死亡した場合に、その相続人は、当該公営住宅を使用する権利を当然に承継するものではない。

最判平2.10.18

4 誤り。

相続人のあることが明らかでないときは、相続財産は、法人とする。(951条)つまり、相続人が不明の場合は、相続財産法人として、ある程度の時間をかけて相続人の有無を調査するのである。

したがって、相続人がいない場合、賃借権は当然に消滅しない。

(相続財産法人の成立)
第九百五十一条 相続人のあることが明らかでないときは、相続財産は、法人とする。

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