今回のテーマは、「債権者代位権」である。

それでは、「管理業務主任者試験」で出題された民法の過去問にチャレンジしてみよう。

令和3年度 管理業務主任者試験問題

【問 3】 マンションの管理組合法人Aは、区分所有者Bに対して有する200万円の管理費債権を保全するため、Bの債務者Cに対する500万円の金銭債権を代位行使した場合に関する記述のうち、民法の規定によれば、最も適切なものはどれか。

1 Aの代位権の行使は、Bの代理人としてBの権利を行使するものであるから、Aが自己の権利として行使することは認められない。

2 Aが代位権を行使をすることができる債権額は500万円であり、Bに対する債権額である200万円に制限されない。

3 CがBに対して反対債権を有していたときでも、Cは、Aに対して、相殺の抗弁を主張することができない。

4 Aは、Cに対して、A自身への直接の支払を求めることができる。

令和3年度 管理業務主任者試験問題
令和3年12月5日
正解:4

それでは、各肢を検討していこう。なお、法令等は、令和4年4月1日現在で施行されているものによる。

1 誤り。

債権者は、自己の債権を保全するため必要があるときは、債務者に属する権利(被代位権利)を行使することができる。(423条1項本文)

したがって、Aは自己の権利として行使できる。

(債権者代位権の要件)
第四百二十三条 債権者は、自己の債権を保全するため必要があるときは、債務者に属する権利(以下「被代位権利」という。)を行使することができる。(略)

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2 誤り。

債権者は、被代位権利を行使する場合において、被代位権利の目的が可分であるときは、自己の債権の額の限度においてのみ、被代位権利を行使することができる。(423条の2)

したがって、Aは自己の債権額200万円の限度のおいてのみ、BのCに対する金銭債権を代位行使できる。

(代位行使の範囲)
第四百二十三条の二 債権者は、被代位権利を行使する場合において、被代位権利の目的が可分であるときは、自己の債権の額の限度においてのみ、被代位権利を行使することができる。

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3 誤り。

債権者が被代位権利を行使したときは、相手方は、債務者に対して主張することができる抗弁をもって、債権者に対抗することができる。(423条の4)

したがって、Cは、Aに対して、相殺の抗弁を主張することができる。

(相手方の抗弁)
第四百二十三条の四 債権者が被代位権利を行使したときは、相手方は、債務者に対して主張することができる抗弁をもって、債権者に対抗することができる。

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4 正しい。

債権者は、被代位権利を行使する場合において、被代位権利が金銭の支払又は動産の引渡しを目的とするものであるときは、相手方に対し、その支払又は引渡しを自己に対してすることを求めることができる。(423条の3前段)

したがって、Aは、Cに対して、A自身への直接の支払を求めることができる。

(債権者への支払又は引渡し)
第四百二十三条の三 債権者は、被代位権利を行使する場合において、被代位権利が金銭の支払又は動産の引渡しを目的とするものであるときは、相手方に対し、その支払又は引渡しを自己に対してすることを求めることができる。(略)

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