今回のテーマは、「請負」である。
それではさっそく、「賃貸不動産経営管理士試験」で出題された過去問にチャレンジしてみよう。
令和4年度 賃貸不動産経営管理士試験 【問 5】
【問 5】 賃貸住宅管理業者であるAが、賃貸人であるBとの管理受託契約に基づき、管理業務として建物の全体に及ぶ大規模な修繕をしたときに関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
1 引き渡された建物が契約の内容に適合しないものであるとして、Aに対して報酬の減額を請求したBは、当該契約不適合に関してAに対し損害賠償を請求することができない。
2 引き渡された建物が契約の内容に適合しないものである場合、Bがその不適合を知った時から1年以内にその旨をAに通知しないと、Bは、その不適合を理由として、Aに対し担保責任を追及することができない。
3 引き渡された建物が契約の内容に適合しないものである場合、Bは、Aに対し、目的物の修補を請求することができる。
4 Aに対する修繕の報酬の支払とBに対する建物の引渡しとは、同時履行の関係にあるのが原則である。
令和4年度 賃貸不動産経営管理士試験
それでは、各肢を検討していこう。
なお、問題は、令和4年4月1日現在施行されている法令等により出題されているが、正解及び解説は令和5年4月1日現在施行されている法令等に基づいて執筆する。
なお、本テーマについてはこれまでにも取り上げている。↓
1 誤り。
請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。(民法632条)
建物の全体に及ぶ大規模な修繕をすることは、請負契約によるものである。
そして、引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、注文者が相当の期間を定めて履行の追完の催告をし、その期間内に履行の追完がないときは、注文者は、その不適合の程度に応じて報酬の減額を請求することができる。(民法559条、同563条1項)
この場合でも、損害賠償の請求をすることができる。(民法559条、同564条)
2 正しい。
請負人が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない仕事の目的物を注文者に引き渡した場合において、注文者がその不適合を知った時から1年以内にその旨を請負人に通知しないときは、注文者は、その不適合を理由として、履行の追完の請求、報酬の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。(民法637条1項)
したがって、BはAに対し、その不適合を知った時から1年以内にその旨を通知しなければ、担保責任を追及することはできない。
3 正しい。
引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、注文者は、請負人に対し、目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる。(民法559条、同562条1項本文)
4 正しい。
報酬は、仕事の目的物の引渡しと同時に、支払わなければならない(民法633条本文)。
すなわち、報酬は後払い(請負人の仕事の完成が先履行)である。
そして、Aに対する修繕の報酬の支払とBに対する建物の引渡しとは、同時履行の関係にたつ。
(参考)C-Book 民法IV〈債権各論〉 改訂新版 (東京リーガルマインド)