本ブログでは、「賃貸不動産経営管理士」を「賃貸管理士」と称する。

なお、本稿では、「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」を「管理業法」という。

今回のテーマは、「管理業法の制定背景等」である。

それではさっそく、「賃貸不動産経営管理士試験」で出題された過去問にチャレンジしてみよう。

令和4年度 賃貸不動産経営管理士試験 【問 29】

【問 29】 管理業法の制定背景や概要に関する次の記述のうち、適切なものはどれか。

1 民間主体が保有する賃貸住宅のストック数は近年、減少傾向にある。
2 近年では、建物所有者自ら賃貸住宅管理業務のすべてを実施する者が増加し、賃貸住宅管理業者に業務を委託する所有者が減少している。
3 管理業法は、賃貸住宅管理業を営む者についての登録制度を設け、また、サブリース事業を規制する法律であり、特定転貸事業者には賃貸住宅管理業の登録を受ける義務が課せられることはない。
4 管理業法において、サブリース事業に対しては、行政による指示、業務停止等の監督処分がされ、また、罰則が科されることによって、事業の適正化の実効性が確保されるものとされているが、サブリース事業の適正化を図る
ための規定の適用対象は特定転貸事業者に限定されない。

令和4年度 賃貸不動産経営管理士試験

正解:4

それでは、各肢を検討していこう。
なお、問題は、2022年4月1日現在施行されている法令等により出題されているが、正解及び解説は2023年4月1日現在施行されている法令等に基づいて執筆する。

1 誤り。

民間主体が保有する賃貸住宅のストック数増加傾向にあり、平成30年時点では住宅ストック総数(約5,360万戸)の4分の1強(28.5%:1,530万戸)を占める。<出典>総務省「住宅・土地統計調査
(国土交通省「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律について」)

住宅・土地統計調査」とは

「住宅・土地統計調査」(5年ごと)は、我が国の住宅とそこに居住する世帯の居住状況、世帯の保有する土地等の実態を把握し、その現状と推移を明らかにする調査である。この調査の結果は、住生活基本法に基づいて作成される住生活基本計画、土地利用計画などの諸施策の企画、立案、評価等の基礎資料として利用されている。

なお、令和5年10月1日現在で「令和5年住宅・土地統計調査」を実施する。

総務省統計局令和5年住宅・土地統計調査のサイト

2 誤り。

所有している賃貸住宅の管理方法としては、「業者に任せず、全て自ら管理している」(約 19%)が 2 割程度にとどまっており、「入居者募集から契約、それ以降の管理も全て業者に委託している」又は「入居者募集や契約、それ以外の管理業務の一部を業者に委託している」(あわせて約 82%)の割合が高い。
(令和元年「賃貸住宅管理業務に関するアンケート調査」(国土交通省))

3 誤り。

管理業法は、社会経済情勢の変化に伴い国民の生活の基盤としての賃貸住宅の役割の重要性が増大していることに鑑み、賃貸住宅の入居者の居住の安定の確保及び賃貸住宅の賃貸に係る事業の公正かつ円滑な実施を図るため、賃貸住宅管理業を営む者に係る登録制度を設け、その業務の適正な運営を確保するとともに、特定賃貸借契約(筆者注・サブリース契約)の適正化のための措置等を講ずることにより、良好な居住環境を備えた賃貸住宅の安定的な確保を図り、もって国民生活の安定向上及び国民経済の発展に寄与することを目的とする。(管理業法1条)

賃貸住宅管理業を営もうとする者は、国土交通大臣の登録を受けなければならない。ただし、その事業の規模が、当該事業に係る賃貸住宅の戸数その他の事項を勘案して国土交通省令で定める規模未満であるときは、この限りでない。
(同法3条1項)

したがって、特定転貸事業者も賃貸住宅管理業の登録を受ける義務が課せられることがある。

4 正しい。

国土交通大臣は、特定転貸事業者(サブリース事業者)が法令に違反した場合、必要な措置をとるべきことを指示することができる。そして、この指示に従わないときは、業務の停止等を命ずることができる。さらに、これらの命令に違反したときには罰則が規定されている。(管理業法33条、34条、第5章)

なお、この適用対象には、勧誘者(特定転貸事業者が特定賃貸借契約の締結についての勧誘を行わせる者をいう)も含まれる。(同法28条、29条)