今回のテーマは、「賃貸借と使用貸借」である。

それではさっそく、「賃貸不動産経営管理士試験」で出題された過去問にチャレンジしてみよう。

令和4年度 賃貸不動産経営管理士試験 【問 28】

【問 28】 令和4年5月1日に締結された建物賃貸借契約と建物使用貸借契約に関する次の記述のうち、正しいものはいくつあるか。

ア 建物賃貸借契約の期間が満了した場合、同契約が法定更新されることはあるが、建物使用貸借契約の期間が満了しても、同契約が法定更新されることはない。
イ 建物賃貸借では建物の引渡しが契約の成立要件となるが、建物使用貸借は合意のみで契約が成立する。
ウ 期間10 年の建物賃貸借契約は有効だが、期間10 年の建物使用貸借契約は無効である。
エ 契約に特段の定めがない場合、建物賃貸借契約における必要費は貸主が負担し、建物使用貸借契約における必要費は借主が負担する。
1 1つ
2 2つ
3 3つ
4 4つ

令和4年度 賃貸不動産経営管理士試験

正解:2

それでは、各肢を検討していこう。
なお、問題は、令和4年4月1日現在施行されている法令等により出題されているが、正解及び解説は令和5年4月1日現在施行されている法令等に基づいて執筆する。

ア 正しい。

建物の賃貸借について期間の定めがある場合において、当事者が期間の満了の1年前から6月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知又は条件を変更しなければ更新をしない旨の通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。(借地借家法26条1項本文)

また、当事者が通知をした場合であっても、建物の賃貸借の期間が満了した後建物の賃借人が使用を継続する場合において、建物の賃貸人が遅滞なく異議を述べなかったときも従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。(借地借家法26条2項)

このように、建物の賃貸借契約については、法定更新の規定がある。一方で、建物使用貸借契約には、法定更新の規定はない。

イ 誤り。

建物賃貸借も建物使用貸借も、いずれも合意のみで契約が成立する。(民法601条、593条)

(使用貸借)
第五百九十三条 使用貸借は、当事者の一方がある物を引き渡すことを約し、相手方がその受け取った物について無償で使用及び収益をして契約が終了したときに返還をすることを約することによって、その効力を生ずる。

(賃貸借)
第六百一条 賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うこと及び引渡しを受けた物を契約が終了したときに返還することを約することによって、その効力を生ずる。

民法・e-Gov法令検索

ウ 誤り。

建物賃貸借契約は、存続期間に制限はない。(借地借家法29条2項)
また、建物使用貸借契約にも存続期間に制限はない。(参考:民法597条)

したがって、期間10 年の建物使用貸借契約は有効である。

(建物賃貸借の期間)
第二十九条 (略)
2 民法(明治二十九年法律第八十九号)第六百四条の規定は、建物の賃貸借については、適用しない。

借地借家法・e-Gov法令検索

(賃貸借の存続期間)
第六百四条 賃貸借の存続期間は、五十年を超えることができない。契約でこれより長い期間を定めたときであっても、その期間は、五十年とする。
(略)

(期間満了等による使用貸借の終了)
第五百九十七条 当事者が使用貸借の期間を定めたときは、使用貸借は、その期間が満了することによって終了する。
2 当事者が使用貸借の期間を定めなかった場合において、使用及び収益の目的を定めたときは、使用貸借は、借主がその目的に従い使用及び収益を終えることによって終了する。
3 使用貸借は、借主の死亡によって終了する。

民法・e-Gov法令検索

エ 正しい。

賃借人は、賃借物について賃貸人の負担に属する必要費を支出したときは、賃貸人に対し、直ちにその償還を請求することができる(民法608条1項)ので、建物賃貸借契約における必要費は貸主が負担する

また、建物使用貸借契約においては借主は、借用物の通常の必要費を負担する。(同595条1項)

したがって、正しいものは、ア、エの二つである。