今回のテーマは、「高齢者住まい法に基づく建物賃貸借契約」である。

それではさっそく、「賃貸不動産経営管理士試験」で出題された過去問にチャレンジしてみよう。

令和4年度 賃貸不動産経営管理士試験 【問 26】

【問 26】 高齢者の居住の安定確保に関する法律(以下、本問において「高齢者住まい法」という。)に基づく建物賃貸借契約(以下、本問において「終身建物賃貸借契約」という。)に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

1 終身建物賃貸借契約は、借主の死亡に至るまで存続し、かつ、借主が死亡したときに終了するが、これは特約により排除することも可能である。
2 終身建物賃貸借契約を締結する場合、公正証書によるなど書面によって行わなければならない。
3 終身建物賃貸借契約の対象となる賃貸住宅は、高齢者住まい法が定めるバリアフリー化の基準を満たす必要がある。
4 終身建物賃貸借契約では、賃料増額請求権及び賃料減額請求権のいずれも排除することができる。

令和4年度 賃貸不動産経営管理士試験

正解:1

それでは、各肢を検討していこう。
なお、問題は、令和4年4月1日現在施行されている法令等により出題されているが、正解及び解説は令和5年4月1日現在施行されている法令等に基づいて執筆する。

高齢者の居住の安定確保に関する法律(平成十三年法律第二十六号)は「高齢者住まい法」というものとする。

1 誤り。

終身建物賃貸借契約とは、賃貸住宅において、公正証書による等書面(その作成に代えて電磁的記録を作成する場合における当該電磁的記録を含む。)によって契約をする建物の賃貸借であって、賃借人の死亡に至るまで存続し、かつ、賃借人が死亡した時に終了するものをいう。

このように、借主の死亡に至るまで存続し、かつ、借主が死亡したときに終了することは、終身建物賃貸借契約の要件であり、これを特約により排除することはできない。(高齢者住まい法54条2号)

2 正しい。

肢1で解説した通り、終身建物賃貸借契約を締結する場合、公正証書によるなど書面によって行わなければならない

3 正しい。

終身建物賃貸借契約の対象となる賃貸住宅は、高齢者住まい法が定めるバリアフリー化の基準を満たす必要がある
(高齢者住まい法54条1号)

(認可の基準)
第五十四条 都道府県知事は、第五十二条第一項の認可の申請があった場合において、当該申請に係る事業が次に掲げる基準に適合すると認めるときは、同項の認可をすることができる。
一 賃貸住宅が、次に掲げる基準に適合するものであること。
イ 賃貸住宅の規模及び設備(加齢対応構造等であるものを除く。)が、国土交通省令で定める基準に適合するものであること。
ロ 賃貸住宅の加齢対応構造等が、段差のない床、浴室等の手すり、介助用の車椅子で移動できる幅の廊下その他の加齢に伴って生ずる高齢者の身体の機能の低下を補い高齢者が日常生活を支障なく営むために必要な構造及び設備の基準として国土交通省令で定める基準に適合するものであること。

高齢者住まい法・e-Gov法令検索

4 正しい。

終身建物賃貸借において、借賃の改定に係る特約がある場合には、借賃増減請求権(借地借家法32条)の規定は適用しない。(高齢者住まい法63条)

したがって、終身建物賃貸借契約では、賃料増額請求権及び賃料減額請求権のいずれも排除することができる。