今回のテーマは、「管理費の滞納に対する法的手続き等」である。
それではさっそく、「管理業務主任者試験」で出題された過去問にチャレンジしてみよう。
令和4年度 管理業務主任者試験問題【問11】
【問 11】 管理費の滞納に対する法的手続等に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
1 管理費を滞納している区分所有者が、不可抗力により、管理費を支払うことができないときは、債務不履行に係る遅延損害金の賠償については、不可抗力をもって抗弁とすることができる。
2 管理費を滞納している区分所有者からその区分所有するマンションを購入した買主は、売主の滞納管理費債務を承継するが、当該債務に係る遅延損害金の債務は承継しない。
3 管理組合は、管理費を滞納している区分所有者に対する訴訟の目的の価額が140万円を超えない場合は、簡易裁判所に訴えを提起することができる。
4 管理組合が、管理費を滞納している区分所有者に対し、滞納管理費の支払を普通郵便により催告しても、時効の完成猶予の効力は生じない。
令和4年度 管理業務主任者試験問題 令和4年(2022年)12月4日
正解:3
それでは、各肢を検討していこう。なお、法令等は、令和4年4月1日現在で施行されているものによるものとする。
1 誤り。
債務不履行に係る遅延損害金のような、金銭の給付を目的とする債務の不履行による損害賠償については、債務者は、不可抗力をもって抗弁とすることができない。(民法419条3項)
(金銭債務の特則)
第四百十九条 金銭の給付を目的とする債務の不履行については、その損害賠償の額は、債務者が遅滞の責任を負った最初の時点における法定利率によって定める。ただし、約定利率が法定利率を超えるときは、約定利率による。
2 前項の損害賠償については、債権者は、損害の証明をすることを要しない。
3 第一項の損害賠償については、債務者は、不可抗力をもって抗弁とすることができない。
民法|e-GOV法令検索
2 誤り。
共用部分等に対して有する債権について、債務者たる区分所有者の特定承継人に対しても行うことができる。(建物の区分所有等に関する法律(区分所有法)7条1項、8条)
なお、「区分所有者の特定承継人」とは、区分所有者から売買などにより区分所有権を承継取得する者をいう。
管理費を滞納した場合の遅延損害金については、管理規約に定めがある場合がほとんであり、その場合には、遅延損害金は当然に発生するものである。定めがない場合には、民法の規定により請求できる。(民法419条、404条)
したがって、当該債務に係る遅延損害金の債務は承継する。
(先取特権)
第七条 区分所有者は、共用部分、建物の敷地若しくは共用部分以外の建物の附属施設につき他の区分所有者に対して有する債権又は規約若しくは集会の決議に基づき他の区分所有者に対して有する債権について、債務者の区分所有権(共用部分に関する権利及び敷地利用権を含む。)及び建物に備え付けた動産の上に先取特権を有する。管理者又は管理組合法人がその職務又は業務を行うにつき区分所有者に対して有する債権についても、同様とする。
(略)
(特定承継人の責任)
第八条 前条第一項に規定する債権は、債務者たる区分所有者の特定承継人に対しても行うことができる。
建物の区分所有等に関する法律|e-Gov法令検索
3 正しい。
簡易裁判所では、紛争の対象となっている金額が140万円を超えない事件を取り扱う。
第三十三条(裁判権) 簡易裁判所は、次の事項について第一審の裁判権を有する。
一 訴訟の目的の価額が百四十万円を超えない請求(行政事件訴訟に係る請求を除く。)
(略)
裁判所法|e-Gov法令検索
4 誤り。
催告があったときは、その時から6箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。(民法150条1項)このように「催告」は、時効完成猶予事由となる。
なお、催告の方法について法律上制限はない。したがって普通郵便で催告を行うことも許容されている。
しかし、普通郵便で催告がなされた場合は、催告をした事実が証拠として残らないので、催告が実際になされたことに関する証拠を保全するために、配達証明付きの内容証明郵便で行うのが一般的である。
(参考)2022年版 出る順管理業務主任者 分野別過去問題集 (東京リーガルマインド)