今回のテーマは、民法の「請負」である。

それではさっそく、「管理業務主任者試験」で出題された過去問にチャレンジしてみよう。

令和4年度 管理業務主任者試験問題【問3】

【問 3 】 マンションの管理組合Aが、施工会社Bとの間で締結したリフォーム工事
の請負契約に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、適切なものはいくつあるか。

ア Aは、Bとの別段の合意がない限り、Bに対し、仕事に着手した時に報酬の全額を支払わなければならない。
イ Aは、仕事が完成した後でも、Bに生じた損害を賠償して請負契約を解除することができる。
ウ Bの行ったリフォーム工事に契約不適合がある場合、Aは、その不適合を知った時から1 年以内にその旨をBに対して通知しなければ、履行の追完の請求をすることができない。
エ 請負契約が仕事の完成前に解除された場合であっても、Bが既にしたリフォーム工事によってAが利益を受けるときは、Bは、Aが受ける利益の割合に応じて報酬を請求することができる。
1  一つ
2  二つ
3  三つ
4  四つ

令和4年度 管理業務主任者試験問題 令和4年(2022年)12月4日
正解:2

それでは、各肢を検討していこう。なお、法令等は、令和4年4月1日現在で施行されているものによるものとする。

ア 誤り。

報酬は、仕事の目的物の引渡しと同時に、支払わなければならない(民法633条本文)。
すなわち、報酬は後払い(請負人の仕事の完成が先履行)である。

目的物の引渡しを要しないときは、同624条1項の準用により、仕事が完成した後でなければ、報酬を請求することができない。(同633条ただし書)

(報酬の支払時期)
第六百三十三条 報酬は、仕事の目的物の引渡しと同時に、支払わなければならない。ただし、物の引渡しを要しないときは、第六百二十四条第一項の規定を準用する。

第八節 雇用
(報酬の支払時期)
第六百二十四条 労働者は、その約した労働を終わった後でなければ、報酬を請求することができない。
(略)
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イ 誤り。

請負人が仕事を完成しない間は、注文者は、いつでも損害を賠償して契約を解除をすることができる。(民法641条)
ただし、この641条に基づく解除は、仕事の完成前に限られる。

(注文者による契約の解除)
第六百四十一条 請負人が仕事を完成しない間は、注文者は、いつでも損害を賠償して契約の解除をすることができる。

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ウ 正しい。

請負人が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない仕事の目的物を注文者に引き渡した場合(その引渡しを要しない場合にあっては、仕事が終了した時に仕事の目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合)は、注文者がその不適合を知った時から1年以内にその旨を請負人に通知しないときは、注文者は、その不適合を理由として、履行の追完の請求、報酬の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。(民法637条1項)

(請負人の担保責任の制限)
第六百三十六条 請負人が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない仕事の目的物を注文者に引き渡したとき(その引渡しを要しない場合にあっては、仕事が終了した時に仕事の目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しないとき)は、注文者は、注文者の供した材料の性質又は注文者の与えた指図によって生じた不適合を理由として、履行の追完の請求、報酬の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。ただし、請負人がその材料又は指図が不適当であることを知りながら告げなかったときは、この限りでない。

(目的物の種類又は品質に関する担保責任の期間の制限)
第六百三十七条 前条本文に規定する場合において、注文者がその不適合を知った時から一年以内にその旨を請負人に通知しないときは、注文者は、その不適合を理由として、履行の追完の請求、報酬の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。

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エ 正しい。

請負が仕事の完成前に解除された場合(民法634条2号)において、請負人が既にした仕事の結果のうち可分な部分の給付によって注文者が利益を受けるときは、その部分を仕事の完成とみなされる。(同634条柱書前段)そして、請負人は、注文者が受ける利益の割合に応じて報酬を請求することができる。(同634条柱書後段)割合的報酬請求権

(注文者が受ける利益の割合に応じた報酬)
第六百三十四条 次に掲げる場合において、請負人が既にした仕事の結果のうち可分な部分の給付によって注文者が利益を受けるときは、その部分を仕事の完成とみなす。この場合において、請負人は、注文者が受ける利益の割合に応じて報酬を請求することができる。
一 注文者の責めに帰することができない事由によって仕事を完成することができなくなったとき。
二 請負が仕事の完成前に解除されたとき。

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したがって、適切なものは2つである。

参考)C-Book 民法IV〈債権各論〉 改訂新版 (東京リーガルマインド)