宅地建物取引士資格試験(宅建試験)で出題された民法の過去問にチャレンジしてみよう。

今回のテーマは、「抵当権」である。

令和4年度 宅地建物取引士資格試験 問題

【問4】 A所有の甲土地にBのCに対する債務を担保するためにCの抵当権(以下この問において「本件抵当権」という。)が設定され、その旨の登記がなされた場合に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。

1 Aから甲土地を買い受けたDが、Cの請求に応じてその代価を弁済したときは、本件抵当権はDのために消滅する。
2 Cに対抗することができない賃貸借により甲土地を競売手続の開始前から使用するEは、甲土地の競売における買受人Fの買受けの時から6か月を経過するまでは、甲土地をFに引き渡すことを要しない。
3 本件抵当権設定登記後に、甲土地上に乙建物が築造された場合、Cが本件抵当権の実行として競売を申し立てるときには、甲土地とともに乙建物の競売も申し立てなければならない。
4 BがAから甲土地を買い受けた場合、Bは抵当不動産の第三取得者として、本件抵当権について、Cに対して抵当権消滅請求をすることができる。

令和4年度 宅地建物取引士資格試験 令和4年10月16日
正解:1

それでは、各肢を検討していこう。なお、法令等は、令和4年4月1日現在で施行されているものによるものとする。

1 正しい。

本肢は、「代価弁済(378条)」に関する出題である。抵当不動産を買い受けて所有権等を取得した第三者(第三取得者)が、抵当権者の請求に応じてその代価を抵当権者に弁済した場合、抵当権をその第三者のために消滅させる制度である。

(代価弁済)
第三百七十八条 抵当不動産について所有権又は地上権を買い受けた第三者が、抵当権者の請求に応じてその抵当権者にその代価を弁済したときは、抵当権は、その第三者のために消滅する。

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2 誤り。

本肢は、「明渡猶予期間制度(395条」に関する出題である。ただし、該当者は、「抵当権者に対抗することができない賃貸借により抵当権の目的である建物の使用又は収益をする者」である。すなわち、土地の賃貸借には適用されない

(抵当建物使用者の引渡しの猶予)
第三百九十五条 抵当権者に対抗することができない賃貸借により抵当権の目的である建物の使用又は収益をする者であって次に掲げるもの(次項において「抵当建物使用者」という。)は、その建物の競売における買受人の買受けの時から六箇月を経過するまでは、その建物を買受人に引き渡すことを要しない。
一 競売手続の開始前から使用又は収益をする者
二 強制管理又は担保不動産収益執行の管理人が競売手続の開始後にした賃貸借により使用又は収益をする者
(略)

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3 誤り。

本肢は、「一括競売(389条1項)」に関する出題である。抵当権の設定後に抵当地に建物が築造されたときは、抵当権者は、土地とともにその建物を競売することができる。すなわち、一括競売は、抵当権者の権利であって、義務ではない。一括競売するか否かは抵当権者が自由に選択できるのである。

第三百八十九条 抵当権の設定後に抵当地に建物が築造されたときは、抵当権者は、土地とともにその建物を競売することができる。(略)

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4 誤り。

本肢は、「抵当権消滅請求(379条~)」に関する出題である。該当者は、原則として、確定的に抵当不動産の所有権等を取得した者である。ただし、主たる債務者、保証人及びこれらの者の承継人は、抵当権消滅請求をすることができない。(380条)

すなわち、主たる債務者のBは、本件抵当権について、Cに対して抵当権消滅請求をすることができない。

(抵当権消滅請求)
第三百七十九条 抵当不動産の第三取得者は、第三百八十三条の定めるところにより、抵当権消滅請求をすることができる。
第三百八十条 主たる債務者、保証人及びこれらの者の承継人は、抵当権消滅請求をすることができない。

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(参考)C-Book 民法II〈物権〉 改訂新版 (東京リーガルマインド)