今回のテーマは、「不動産の売買契約」である。

それでは、「ファイナンシャル・プランニング技能検定 2級 学科試験(2022年度9月実施)」で出題された過去問にチャレンジしてみよう。

2022年度9月実施 ファイナンシャル・プランニング技能検定 2級 学科試験

問題 43
不動産の売買契約に係る民法の規定に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。なお、特約については考慮しないものとする。

1.売買契約締結後、買主の責めに帰すことのできない事由により、当該契約の目的物の引渡債務の全部が履行不能となった場合、買主は、履行の催告をすることなく、直ちに契約の解除をすることができる。

2.売主が種類または品質に関して契約の内容に適合しないことを過失なく知らないまま、売買契約の 目的物を買主に引き渡した場合、買主は、不適合を知った時から1年以内にその旨を売主に通知しないときは、その不適合を理由として契約の解除をすることができない。

3.買主が売主に解約手付を交付した後、売買代金の一部を支払った場合、売主は、受領した代金を返還し、かつ、手付金の倍額を現実に提供しても、契約を解除することができない。

4.売買の目的物である建物が、その売買契約の締結から当該建物の引渡しまでの間に、台風によって 全壊した場合、売主の責めに帰すことのできない事由であることから、買主は、売主に対して建物代金の支払いを拒むことはできない。

ファイナンシャル・プランニング技能検定 2級 学科試験(2022年度9月実施)

正解:4

それでは、各肢を検討していこう。なお、法令等は、2022年10月1日現在で施行されているものに基づくものとする。

1 正しい。

債務の全部の履行が不能である場合には、債権者は、催告をすることなく、直ちに契約の解除をすることができる。(民法542条1項1号)

したがって、本肢では、買主は、履行の催告をすることなく、直ちに契約の解除をすることができる。

(催告によらない解除)
第五百四十二条 次に掲げる場合には、債権者は、前条の催告をすることなく、直ちに契約の解除をすることができる。
一 債務の全部の履行が不能であるとき。
(略)

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2 正しい。

 売主が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない目的物を過失なく知らないまま、買主に引き渡した場合において、買主がその不適合を知った時から1年以内にその旨を売主に通知しないときは、買主は、その不適合を理由として、契約の解除をすることができない。(民法566条)

目的物の種類又は品質に関する担保責任の期間の制限)
第五百六十六条 売主が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない目的物を買主に引き渡した場合において、買主がその不適合を知った時から一年以内にその旨を売主に通知しないときは、買主は、その不適合を理由として、履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。ただし、売主が引渡しの時にその不適合を知り、又は重大な過失によって知らなかったときは、この限りでない。

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3 正しい。

買主が売主に手付を交付したときは、その相手方が契約の履行に着手する前は、買主はその手付を放棄し、売主はその倍額を現実に提供して、契約の解除をすることができる。(民法557条)

本肢では、買主が売主に解約手付を交付した後、売買代金の一部を支払っている。これは、契約の履行の着手にあたるので、売主は、手付を現実に提供しても契約の解除をすることができない。

(手付)
第五百五十七条 買主が売主に手付を交付したときは、買主はその手付を放棄し、売主はその倍額を現実に提供して、契約の解除をすることができる。ただし、その相手方が契約の履行に着手した後は、この限りでない。
(略)

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4 誤り。

当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができる。(民法536条1項)

危険負担とは、契約成立後、各債務が完全に履行される前に、一方の債務が当事者の責めに帰することができない事由によって履行不能となった場合に、反対債務の履行がどうなるかを扱うものである。そして、この制度では、反対債務の履行を拒絶することができるかどうかが問題となる。

危険負担は、原則として、債務者主義と規定されている。本肢では、売主=債務者なので、買主=債権者は、売主に対して建物代金の支払いを拒むことができる。

(債務者の危険負担等)
第五百三十六条 当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができる。
(略)

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(参考)C-Book 民法IV〈債権各論〉 改訂新版 (LEC東京リーガルマインド)