今回のテーマは、「相続」である。

それでは、「管理業務主任者試験」で出題された民法の過去問にチャレンジしてみよう。

令和2年度 管理業務主任者試験問題【問1】

【問1】土地甲を所有するAが死亡した場合に、甲の相続に関する記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。なお、Aには配偶者B、子C、直系尊属の父Dのみがいるものとする。

1 AとCは同乗する飛行機の墜落事故で死亡したが、AとCのどちらが先に死亡したか明らかでない場合は、Dの相続分は2分の1である。

2 Aが死亡した後に、Cが交通事故で死亡した場合には、Bのみが甲を相続する。なお、Cには配偶者及び直系卑属はいないものとする。

3 Aが死亡する前に、Cが交通事故で死亡していた場合には、Bの相続分は2分の1である。

4 BとCが法定相続分に従い甲を共同相続したが、その後、Cが甲の共有部分を放棄した場合には、その持分は国庫に帰属する。

令和2年度 管理業務主任者試験問題
正解:2

それでは、各肢を検討していこう。なお、法令等は、令和4年4月1日現在で施行されているものによるものとする。

1 誤り。

相続は、死亡によって開始する。(882条)そして、数人の者が死亡した場合において、そのうちの一人が他の者の死亡後になお生存していたことが明らかでないときは、これらの者は、同時に死亡したものと推定する。(32条の2)

本肢では、A とCは同時に死亡したものと推定され、Aの相続人はB及びDとなる。(889条1項1号、890条)したがって、Dの相続分は3分の1である。(900条2号)

第六節 同時死亡の推定
第三十二条の二 数人の者が死亡した場合において、そのうちの一人が他の者の死亡後になお生存していたことが明らかでないときは、これらの者は、同時に死亡したものと推定する。

(相続開始の原因)
第八百八十二条 相続は、死亡によって開始する。

第八百八十七条 被相続人の子は、相続人となる。
(略)

(直系尊属及び兄弟姉妹の相続権)
第八百八十九条 次に掲げる者は、第八百八十七条の規定により相続人となるべき者がない場合には、次に掲げる順序の順位に従って相続人となる。
一 被相続人の直系尊属。ただし、親等の異なる者の間では、その近い者を先にする。
(略)

(配偶者の相続権)
第八百九十条 被相続人の配偶者は、常に相続人となる。この場合において、第八百八十七条又は前条の規定により相続人となるべき者があるときは、その者と同順位とする。

(法定相続分)
第九百条 同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。
(略)
二 配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は、三分の二とし、直系尊属の相続分は、三分の一とする。
(略)


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2 Aの死亡時には、B及びCが甲を相続する。(887条1項、890条)さらに、Cの死亡時に、本肢では、Cの直系尊属であるBがCを相続する。(889条1項1号)

したがって、CがAから相続した甲の持分はBが相続する。結果として、Bのみが甲を相続する。

3 誤り。

本肢では、Aの相続人は、B及びDとなる。(889条1項1号、890条)そして、Bの相続分は、3分の2となる。(900条2号)

4 誤り。

相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属する。(898条)そして、本肢では、いったんはBとCが甲を共有していた。しかし、共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する。(255条)

したがって、Cの持分は、共有者であるBに帰属する。

(共同相続の効力)
第八百九十八条 相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属する。

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