今回のテーマは、「賃貸借」である。
それでは、「管理業務主任者試験」で出題された民法の過去問にチャレンジしてみよう。
令和3年度 管理業務主任者試験問題
【問 41】 区分所有者Aが、自己の所有するマンションの専有部分をBに賃貸する契約において、AB間で合意した次の特約のうち、民法及び借地借家法の規定によれば、無効であるものを全て含む組合せはどれか。
ア Bが、賃料を滞納した場合には、Aは、直ちに専有部分に入る玄関扉の鍵を取り替える特約
イ Bは、賃貸借の契約期間中、中途解約できる特約
ウ Bが死亡したときは、同居する相続人がいる場合であっても、賃貸借契約は終了する特約
エ BがAの同意を得て建物に付加した造作であっても、賃貸借契約の終了に際して、造作買取請求はできない特約
1 エ
2 ア・イ
3 ア・ウ
4 イ・ウ・エ
令和3年度 管理業務主任者試験問題
正解:3
それでは、各肢を検討していこう。なお、法令等は、令和4年4月1日現在で施行されているものによるものとする。
ア 無効である。
本肢のような特約は、公序良俗に反すると解され無効である。(90条)
(公序良俗)
第九十条 公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする。
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イ 有効である。
当事者が賃貸借の期間を定めた場合であっても、当事者の一方又は双方がその期間内に解約をする権利を留保したときは、期間の定めのない賃貸借の解約申入れの規定(617条)が準用される。(618条)
したがって、本肢の特約は有効である。
(期間の定めのない賃貸借の解約の申入れ)
第六百十七条 当事者が賃貸借の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合においては、次の各号に掲げる賃貸借は、解約の申入れの日からそれぞれ当該各号に定める期間を経過することによって終了する。
一 土地の賃貸借 一年
二 建物の賃貸借 三箇月
三 動産及び貸席の賃貸借 一日
2 収穫の季節がある土地の賃貸借については、その季節の後次の耕作に着手する前に、解約の申入れをしなければならない。
(期間の定めのある賃貸借の解約をする権利の留保)
第六百十八条 当事者が賃貸借の期間を定めた場合であっても、その一方又は双方がその期間内に解約をする権利を留保したときは、前条の規定を準用する。
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ウ 無効である。
建物の賃貸人による更新をしない旨の通知又は建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。(借地借家法28条)
本肢の特約は、上記の規定に反する賃借人に不利なものであるから無効である。
(建物賃貸借契約の更新拒絶等の要件)
第二十八条 建物の賃貸人による第二十六条第一項の通知又は建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。
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エ 有効である。
建物の賃貸人の同意を得て建物に付加した畳、建具その他の造作がある場合には、建物の賃借人は、建物の賃貸借が期間の満了又は解約の申入れによって終了するときに、建物の賃貸人に対し、その造作を時価で買い取るべきことを請求することができる。(造作買取請求権 借地借家法33条1項)
もっとも、この造作買取請求権は任意規定なので、これを排除する特約は、可能である。(借地借家法37条参照)
(造作買取請求権)
第三十三条 建物の賃貸人の同意を得て建物に付加した畳、建具その他の造作がある場合には、建物の賃借人は、建物の賃貸借が期間の満了又は解約の申入れによって終了するときに、建物の賃貸人に対し、その造作を時価で買い取るべきことを請求することができる。建物の賃貸人から買い受けた造作についても、同様とする。
(略)
(強行規定)
第三十七条 第三十一条、第三十四条及び第三十五条の規定に反する特約で建物の賃借人又は転借人に不利なものは、無効とする。
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