今回のテーマは、「相隣関係」である。

それでは、宅地建物取引士資格試験(宅建士試験)の過去問にチャレンジしてみよう。

令和5年度 宅地建物取引士資格試験 【問2】

【問 2 】 相隣関係に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。
1  土地の所有者は、境界標の調査又は境界に関する測量等の一定の目的のために必要な範囲内で隣地を使用することができる場合であっても、住家については、その家の居住者の承諾がなければ、当該住家に立ち入ることはできない。
2  土地の所有者は、隣地の竹木の枝が境界線を越える場合、その竹木の所有者にその枝を切除させることができるが、その枝を切除するよう催告したにもかかわらず相当の期間内に切除しなかったときであっても、自らその枝を切り取ることはできない。
3  相隣者の一人は、相隣者間で共有する障壁の高さを増すときは、他方の相隣者の承諾を得なければならない。
4  他の土地に囲まれて公道に通じない土地の所有者は、公道に出るためにその土地を囲んでいる他の土地を自由に選んで通行することができる。

令和5年度 宅地建物取引士資格試験 令和5年10月15日

正解:1

1 正しい。

土地の所有者は、次に掲げる目的のため必要な範囲内で、隣地を使用することができる。ただし、住家については、その居住者の承諾がなければ、立ち入ることはできない。(民法209条1項)

  • 境界又はその付近における障壁、建物その他の工作物の築造、収去又は修繕
  • 境界標の調査又は境界に関する測量
  • 枝の切取り

2 誤り。

越境された土地の所有者は、竹木の所有者に枝を切除させる必要があるという原則を維持しつつ、
次のいずれかの場合には、枝を自ら切り取ることができる。(233条3項)

  1. 木の所有者に越境した枝を切除するよう催告したが、竹木の所有者が相当の期間内に切除しないとき
  2. 竹木の所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないとき
  3. 急迫の事情があるとき

したがって、越境された土地の所有者は、竹木の所有者に越境した枝を切除するよう催告したが、竹木の所有者が相当の期間内に切除しないときは、枝を自ら切り取ることができる

3 誤り。

相隣者の一人は、共有の障壁の高さを増すことができる。(231条1項本文)
そして、障壁の高さを増したときは、その高さを増した部分は、その工事をした者の単独の所有に属する。(同2項)

したがって、他方の相隣者の承諾を得る必要はない。

4 誤り。

通行の場所及び方法は、通行権を有する者のために必要であり、かつ、他の土地のために損害が最も少ないものを選ばなければならない。(211条1項)

したがって、自由に選んで通行することができるわけではない。