今回のテーマは、「所得税の確定申告」である。
それでは、「ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<基礎編>(2023年9月10日実施)」で出題された過去問にチャレンジしてみよう。
ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<基礎編>(2023年9月10日実施)《問28》
《問28》 所得税の確定申告に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。なお、記載のない事項については考慮しないものとする。
1) 同族会社の役員に、役員給与による給与所得の金額が1,500万円、当該同族会社への貸付金の利子の受取りによる雑所得の金額が10万円ある場合、当該役員は確定申告をしなければならない。
2) 居住者が、年の途中で国内に住所等を有しないこととなるため、納税管理人の届出をした場合、納税管理人は当該納税者の所得について国内に住所等を有しないことになった日から4カ月以内に確定申告をしなければならない。
3) 確定申告をすべき者が年の途中で死亡し、相続人が2人以上いる場合、死亡した者に係る確定申告書は相続人がそれぞれ提出しなければならない。
4) 給与所得者が年の途中で退職し、同年中に再就職した場合、再就職先において支給された給与についてのみ年末調整が行われ、前の勤務先における給与については年末調整が行われないため、当該給与所得者は確定申告をしなければならない。
ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<基礎編>(2023年9月10日実施)
それでは、各肢を検討していこう。
なお、問題は、2023年4月1日現在施行されている法令等により出題されているが、正解及び解説は2023年10月1日現在施行されている法令等に基づいて執筆する。
1 正しい。
給与所得者は、年末調整によって所得税額が精算されるので、通常は確定申告の必要はない。
ただし、同族会社の役員で、その同族会社から給与等のほかに当該同族会社への貸付金の利子の受取りによる雑所得の金額がある場合は、当該役員は確定申告をしなければならない。(所得税法施行令262条の2)
(給与所得以外の所得が少額であつても確定申告書の提出を要する場合)
第262条の2 法第百二十一条第一項(確定所得申告を要しない場合)に規定する政令で定める場合は、次に掲げる者がその者に係る第一号に規定する法人から、法第二十八条第一項(給与所得)に規定する給与等のほか、当該法人の事業に係る貸付金の利子又は不動産、動産、営業権その他の資産を当該事業の用に供することによる対価の支払を受ける場合とする。
一 法第百五十七条第一項第一号(同族会社の行為又は計算の否認)に規定する同族会社である法人の役員
二 前号の役員の親族であり又はあつた者
三 第一号の役員とまだ婚姻の届出をしないが事実上婚姻関係と同様の事情にあり又はあつた者
四 第一号の役員から受ける金銭その他の資産によつて生計を維持している者
所得税法施行令・e-GOV法令検索
2 誤り。
確定申告をしなければならない者が、年の途中で国内に住所等を有しないこととなる場合は、その出国の日までに、確定申告をしなければならない。(所得税法127条1項)
(年の中途で出国をする場合の確定申告)
第127条 居住者は、年の中途において出国をする場合において、その年一月一日からその出国の時までの間における総所得金額、退職所得金額及び山林所得金額について、第百二十条第一項(確定所得申告)の規定による申告書を提出しなければならない場合に該当するときは、第三項の規定による申告書を提出する場合を除き、その出国の時までに、税務署長に対し、その時の現況により同条第一項各号に掲げる事項を記載した申告書を提出しなければならない。
(略)
所得税法・e-GOV法令検索
なお、個人である納税者が国内に住所及び居所(事務所及び事業所を除く。)を有せず、若しくは有しないこととなる場合等において、納税申告書の提出その他国税に関する事項を処理する必要があるときは、その者は、当該事項を処理させるため、国内に住所又は居所を有する者で当該事項の処理につき便宜を有するもののうちから納税管理人を定めなければならない。(国税通則法117条1項)
そして、納税管理人を定めた場合は、一般原則通り、2月16日から3月15日までの間に納税管理人が申告する。
3 誤り。
確定申告をすべき者が年の途中で死亡し、相続人が2人以上いる場合、死亡した者に係る確定申告書は、相続人が2人以上あるときは、当該申告書は、各相続人が連署による一の書面で提出しなければならない。
ただし、他の相続人の氏名を付記して各別に提出することも認められる。
(所得税法施行令263条2項)
4 誤り。
給与所得者が年の途中で退職し、同年中に再就職した場合、原則として、再就職先において支給された給与と前職の給与を合算して、年末調整が行われることになるので、当該給与所得者は確定申告をする必要はない。
なお、年の途中で退職し、再就職しなかった者で、年末調整を受けなかった者は、確定申告をすれば過納分の税金が還付される場合がある。