今回のテーマは、「不動産の売買契約に係る民法の規定」である。

それでは、「ファイナンシャル・プランニング技能検定 2級 学科試験(2023年9月10日実施)」で出題された過去問にチャレンジしてみよう。

ファイナンシャル・プランニング技能検定 2級 学科試験(2023年9月10日実施)問題43

問題 43
不動産の売買契約に係る民法の規定に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。なお、特約については考慮しないものとする。

1.同一の不動産について二重に売買契約が締結された場合、譲受人相互間においては、売買契約の締結の先後にかかわらず、原則として、所有権移転登記を先にした者が、当該不動産の所有権の取得を他方に対抗することができる。
2.不動産の売買契約において買主が売主に手付金を交付した場合、売主が契約の履行に着手する前であれば、買主はその手付金を放棄することで契約を解除することができる。
3.不動産が共有されている場合に、各共有者が、自己の有している持分を第三者に譲渡するときは、他の共有者の同意を得る必要がある。
4.売買の目的物である建物が、その売買契約の締結から当該建物の引渡しまでの間に、地震によって全壊した場合、買主は、売主に対する建物代金の支払いを拒むことができる。

ファイナンシャル・プランニング技能検定 2級 学科試験(2023年9月10日実施)

正解:3

それでは、各肢を検討していこう。
なお、問題は、2023年4月1日現在施行されている法令等により出題されているが、正解及び解説は2023年10月1日現在施行されている法令等に基づいて執筆する。

本テーマはこれまでにも取り上げている。

1 正しい。

同一の不動産について二重に売買契約が締結された場合、譲受人相互間においては、売買契約の締結の先後にかかわらず、原則として、所有権移転登記を先にした者が、当該不動産の所有権の取得を他方に対抗することができる。

2 正しい。

買主が売主に手付を交付したときは、その相手方が契約の履行に着手する前は、買主はその手付を放棄し、売主はその倍額を現実に提供して、契約の解除をすることができる。(民法557条)

3 誤り。

共有持分の譲渡・共有物の譲渡について
共有持分を譲渡するときは、他の共有者の同意を得なくても単独で譲渡できる。
なお、共有物全体を譲渡するときは、共有者全員の同意が必要となる。

4 正しい。

当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができる。(民法536条1項)

危険負担とは、契約成立後、各債務が完全に履行される前に、一方の債務が当事者双方の責めに帰することができない事由によって履行不能となった場合に、反対債務の履行がどうなるかを扱うものである。そして、この制度では、反対債務の履行を拒絶することができるかどうかが問題となる。

本肢では、買主は、売主に対して建物代金の支払いを拒むことができる。