今回のテーマは、「居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」である。
それでは、「ファイナンシャル・プランニング技能検定 2級 学科試験(2022年度9月実施)」で出題された過去問にチャレンジしてみよう。
問題 32 「居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除」(以下「本特例」という)に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
1.納税者が本特例の適用を受けるためには、譲渡した居住用財産の所有期間が、譲渡した日の属する年の1月1日時点で10年を超えていなければならない。
2.本特例のうち、譲渡損失の損益通算の特例の適用を受けるためには、買換資産を取得した日の属する年の12月31日時点において、買換資産に係る住宅借入金等の金額を有していなければならない。
3.本特例のうち、譲渡損失の損益通算の特例の適用を受けるためには、納税者のその年分の合計所得金額が3,000万円以下でなければならない。
4.納税者が本特例の適用を受けた場合、買換資産に係る住宅借入金等の金額を有していたとしても、 住宅借入金等特別控除の適用を受けることはできない。
ファイナンシャル・プランニング技能検定 2級 学科試験(2022年度9月実施)
それでは、各肢を検討していこう。なお、法令等は、2022年10月1日現在で施行されているものに基づくものとする。
1 誤り。
譲渡の年の1月1日における所有期間が5年を超えていること。
2 正しい。
買換資産(新居宅)を取得した年の12月31日において買換資産について償還期間10年以上の住宅ローンを有すること。
3 誤り。
合計所得金額が3,000万円を超える場合には、繰越控除の適用できない、
4 誤り。
この特例と住宅借入金等特別控除制度は併用できる。
特例の概要
居住用財産(旧居宅)を令和5年12月31日までに売却して、新たに居住用財産(新居宅)を購入した場合に、旧居宅の譲渡による損失(譲渡損失)が生じたときは、一定の要件を満たすものに限り、その譲渡損失をその年の給与所得や事業所得など他の所得から控除(損益通算)することができる。
さらに、損益通算を行っても控除しきれなかった譲渡損失は、譲渡の年の翌年以後3年内に繰り越して控除(繰越控除)することができる。
特例の要件
- 譲渡の年の1月1日における所有期間が5年を超える資産(旧居宅)の譲渡であること。
- 住んでいた家屋または住まなくなった家屋を取り壊した場合は、さらに次の要件すべてに当てはまることが必要となる。
- その敷地の譲渡契約が、家屋を取り壊した日から1年以内に締結され、かつ、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること。
- 家屋を取り壊してから譲渡契約を締結した日まで、その敷地を貸駐車場などその他の用に供していないこと。
- 住んでいた家屋または住まなくなった家屋を取り壊した場合は、さらに次の要件すべてに当てはまることが必要となる。
- 譲渡の年の前年の1月1日から売却の年の翌年12月31日までの間に家屋の床面積が50平方メートル以上であるものを取得すること。
- 買換資産(新居宅)を取得した年の翌年12月31日までの間に居住の用に供することまたは供する見込みであること。
- 買換資産(新居宅)を取得した年の12月31日において買換資産について償還期間10年以上の住宅ローンを有すること。
特例の適用除外
(1)繰越控除が適用できない場合
- 旧居宅の敷地の面積が500平方メートルを超える場合(500平方メートルを超える部分に対応する譲渡損失の金額については適用できない。)
- 合計所得金額が3,000万円を超える場合(合計所得金額が3,000万円を超える年がある場合は、その年のみ適用できない。)
(2)損益通算および繰越控除の両方が適用できない場合
- 旧居宅の売主と買主が、親子や夫婦など特別の関係にある場合
- 旧居宅を売却した年の前年および前々年に次の特例を適用している場合
- 居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の軽減税率の特例(措法31の3)
- 居住用財産の譲渡所得の3,000万円の特別控除(被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除の特例を除きます。)
- 特定の居住用財産の買換えの場合の長期譲渡所得の課税の特例(措法36の2)
- 特定の居住用財産を交換した場合の長期譲渡所得の課税の特例(措法36の5)
- 旧居宅を売却した年またはその年の前年以前3年内における資産の譲渡について、特定居住用財産の譲渡損失の損益通算の特例(措法41の5の2第1項)の適用を受ける場合または受けている場合
- 売却の年の前年以前3年内の年において生じた他の居住用財産の譲渡損失の金額について居住用財産を買い換えた場合の譲渡損失の損益通算の特例の適用を受けている場合
なお、この特例と住宅借入金等特別控除制度は併用できる。
(参考)うかる! FP2級・AFP 王道テキスト 2022-2023年版 (日本経済新聞出版 )
マイホームを買い換えた場合に譲渡損失が生じたとき(マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例) (国税庁ホームページ)