今回のテーマは、「所得税における各種所得不動産所得)」である。

それでは、「ファイナンシャル・プランニング技能検定 2級 学科試験(2022年度9月実施)」で出題された過去問にチャレンジしてみよう。

ファイナンシャル・プランニング技能検定 2級 学科試験 (2022年度9月実施)

問題 31
所得税における各種所得に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。

1.不動産所得の金額は、原則として、「不動産所得に係る総収入金額-必要経費」の算式により計算される。

2.賃貸の用に供している土地の所有者が、当該土地を取得した際に支出した仲介手数料は、当該土地の取得価額に算入されるため、その支払った年分の不動産所得の金額の計算上、必要経費に算入することはできない。

3.個人による不動産の貸付けが事業的規模である場合、その賃貸収入による所得は、事業所得に該当する。

4.借家人が賃貸借の目的とされている居宅の立退きに際して受け取る立退き料(借家権の消滅の対価の額に相当する部分の金額を除く)は、原則として一時所得に該当する。

ファイナンシャル・プランニング技能検定 2級 学科試験

正解:3

それでは、各肢を検討していこう。なお、法令等は、2022年10月1日現在で施行されているものに基づくものとする。

1 正しい。

不動産所得の金額 = 不動産所得に係る総収入金額 ー 必要経費

総収入金額

家賃、地代、礼金、更新料などのほか、年内の支払期限を過ぎている未払いの家賃、入居者に返還しないことが確定している敷金保証金なども含まれる。

必要経費

固定資産税、都市計画税、不動産取得税、損害保険料、修繕費、募集広告費、管理費、減価償却費借入金の利子元金は必要経費にはならない。)、賃借人の立退きに要する立退料(譲渡に伴うものを除く)など。

なお、所得税や住民税は必要経費にはならない。

2 正しい。

所得税法は、購入した減価償却資産の取得価額について、その資産の購入の代価に購入手数料等を含めることとされているところ(所得税法第49条第2項、所得税法施行令第126条第1項第1号)、本件仲介手数料は、上記の「購入手数料」に該当します。
 そうすると、本件仲介手数料のうち本件土地の購入に係る部分の金額は、その土地の取得価額に算入され、不動産所得の必要経費には算入されません。また、本件仲介手数料のうち本件建物の購入に係る部分の金額は、その建物の取得価額に算入され、その取得価額に基づいて計算される減価償却費の額が不動産所得の必要経費に算入されることとなります。
 したがって、本件仲介手数料の全額を支払った年分の必要経費に算入することはできません。

国税庁ホームページ 質疑応答事例(所得税)

3 誤り。

不動産等の貸付による所得は、不動産貸付業のように、それを生業とする場合や事業的規模の貸付であっても、事業所得ではなく不動産所得になる。

事業的規模の貸付 家なら5棟、部屋なら10室以上の規模の貸付を行う場合をいう。

なお、不動産所得は、その不動産貸付けが事業として行われているかどうかによって、所得金額の計算上の取扱いが異なる場合がある。ただし、その規模にかかわらず不動産等の貸付による所得は「不動産所得」になる。(本問のように正誤問題で出題されやすいので注意したい)

(参考)事業としての不動産貸付けとそれ以外の不動産貸付けとの区分(国税庁ホームページ・タックスアンサー(よくある税の質問)

4 正しい。

立退料は、その中身から次の3つの性格に区分され、それぞれその所得区分は次のとおりとなります。

1 資産の消滅の対価補償としての性格のもの
家屋の明渡しによって消滅する権利の対価の額に相当する金額は、譲渡所得の収入金額となります。

2 収入金額または必要経費の補填としての性格のもの
立ち退きに伴って、その家屋で行っていた事業の休業等による収入金額または必要経費を補填する金額は、事業所得等の収入金額となります。

3 その他の性格のもの
記1および2に該当する部分を除いた金額は、一時所得の収入金額となります。

国税庁ホームページ・タックスアンサー(よくある税の質問)

(参考)国税庁ホームページ、うかる! FP2級・AFP 王道テキスト 2022-2023年版(日本経済新聞出版 )、FP2級・AFP 合格のトリセツ 速習テキスト 2022-23年版(東京リーガルマインド)