今回のテーマは、「所得税の基本的な仕組み」である。

それでは、「ファイナンシャル・プランニング技能検定 2級 学科試験(2023年9月10日実施)」で出題された過去問にチャレンジしてみよう。

ファイナンシャル・プランニング技能検定 2級 学科試験(2023年9月10日実施)問題31

問題 31
所得税の基本的な仕組みに関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。

1.所得税では、原則として、納税者本人の申告により納付すべき税額が確定し、この確定した税額を納付する申告納税制度が採用されている。
2.所得税の納税義務を負うのは居住者のみであり、非居住者が所得税の納税義務を負うことはない。
3.所得税では、課税対象となる所得を10種類に区分し、それぞれの所得の種類ごとに定められた計算方法により所得の金額を計算する。
4.所得税額の計算において課税総所得金額に乗じる税率は、課税総所得金額が大きくなるにつれて段階的に税率が高くなる超過累進税率が採用されている。

ファイナンシャル・プランニング技能検定 2級 学科試験(2023年9月10日実施)

正解:2

2023年9月実施の問題は、2023年4月1日現在施行されている法令等により出題されているが、本稿の正解及び解説は2023年10月1日現在施行されている法令等に基づいて執筆する。

なお、本テーマについては、これまでに扱っている。↓

FPトピックス(所得税の仕組み)

1 正しい。

納税方法の課税方式による区分

  • 申告納税方式 所得税、法人税、贈与税、相続税など。納税者が自分で税額を計算して納めるべき金額を申告する。
  • 賦課課税方式 住民税、固定資産税、自動車税など。国や地方公共団体が計算して通知した税額を納める

2 誤り。

居住者とは、日本国内に住所があるかまたは現在まで引き続いて1年以上居所がある個人をいう。
そして、居住者以外の個人を非居住者という。
非居住者は、日本国内において生じた所得(国内源泉所得)に限って課税される

個人の区分定義課税所得の範囲
居住者非永住者以外の居住者次のいずれかに該当する個人のうち非永住者以外の者
・ 日本国内に住所を有する者
・ 日本国内に現在まで引き続き1年以上居所を有する者
国内および国外において生じたすべての所得
非永住者居住者のうち、次のいずれにも該当する者
・ 日本国籍を有していない者
・ 過去10年以内において、日本国内に住所又は居所を有していた期間の合計が5年以下である者
国外源泉所得以外の所得および国外源泉所得で日本国内において支払われ、または国外から送金されたもの
非居住者居住者以外の個人国内源泉所得
居住者・非居住者の課税所得の範囲

(参考)No.2010 納税義務者となる個人(国税庁ウェブサイト)

3 正しい。

所得の分類

所得は、発生形態に応じて、次の10種類に分類される。

  1. 利子所得 預貯金及び公社債の利子。公社債投資信託の収益の分配に係る所得。
  2. 配当所得 株式の配当金など。公社債投資信託以外の投資信託の収益の分配。
  3. 事業所得 事業から生じた所得。
  4. 不動産所得 不動産等の貸付による賃料など。
  5. 給与所得 給与、賞与など。
  6. 退職所得 退職金など。
  7. 山林所得 山林の伐採または譲渡による所得。
  8. 譲渡所得 資産の譲渡による所得。
  9. 一時所得 生命保険の満期保険金など。
  10. 雑所得 公的年金の老齢給付、個人年金など。

4 正しい。

所得税

所得税は、個人が1月1日から12月31日までの1年間に得た所得に対して課税される(暦年課税単位)

所得金額 = 収入金額 - 必要経費

所得が高い人ほど、税金の負担能力が高いので、所得が高くなるにつれて税率が高くなる超過累進税率(5%から45%の7段階)を採用している。