今回のテーマは、「民法に規定する相続」である。

それでは、「ファイナンシャル・プランニング技能検定 2級 学科試験(2023年1月22日実施)」で出題された過去問にチャレンジしてみよう。

ファイナンシャル・プランニング技能検定 2級 学科試験(2023年1月22日実施)問題56

問題 56
民法に規定する相続に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。

1.相続人が不存在である場合は、被相続人の相続財産は法人となり、特別縁故者の請求によってその財産の全部または一部が特別縁故者に対して分与されることがある。

2.相続の単純承認をした相続人は、被相続人の財産のうち、積極財産のみを相続する。

3.限定承認は、相続人が複数いる場合、限定承認を行おうとする者が単独ですることができる。

4.相続の放棄をする場合は、相続人は相続の開始があったことを知った時から原則として6ヵ月以内に家庭裁判所に申述しなければならない。

ファイナンシャル・プランニング技能検定 2級 学科試験(2023年1月22日実施)

正解:1

それでは、各肢を検討していこう。なお、法令等は、2022年(令和4年)10月1日現在で施行されているものに基づくものとする。

1 正しい。

民法は、相続人がいるかどうかが明らかでない場合に、相続財産を法人とし、(民法951条)、家庭裁判所にその清算人を選任させ(同952条)、この者に相続財産の管理・清算手続きをおこなわせる。この手続き中に相続人が現れないときは、清算後の残余財産を特別縁故者(同958条の2)または国庫に帰属させる。(同959条)

(相続財産法人の成立)
第九百五十一条 相続人のあることが明らかでないときは、相続財産は、法人とする。
(相続財産の管理人の選任)
第九百五十二条 前条の場合には、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によって、相続財産の管理人を選任しなければならない。
2 前項の規定により相続財産の管理人を選任したときは、家庭裁判所は、遅滞なくこれを公告しなければならない。

(特別縁故者に対する相続財産の分与)
第九百五十八条の三 前条の場合において、相当と認めるときは、家庭裁判所は、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者の請求によって、これらの者に、清算後残存すべき相続財産の全部又は一部を与えることができる。
2 前項の請求は、第九百五十八条の期間の満了後三箇月以内にしなければならない。

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2 誤り。

単純承認」とは、相続開始によっていちおう生じた相続の効果を、全面的・確定的に帰属させる行為である。その結果、相続人は、「無限」に被相続人の権利義務を承継する。(民法920条)。すなわち、相続財産中、消極財産(マイナス)が積極財産(プラス)より多い場合は、相続人は自己の財産をもって債権者に弁済しなければならない。

(単純承認の効力)
第九百二十条 相続人は、単純承認をしたときは、無限に被相続人の権利義務を承継する。

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3 誤り。

限定承認」とは、相続によって得た財産の限度においてのみ被相続人の債務及び遺贈を弁済することを留保して、相続を承認する旨の意思表示である。(民法922条)

そして、限定承認は、相続人全員が共同してしなければならない。(同923条)

(限定承認)
第九百二十二条 相続人は、相続によって得た財産の限度においてのみ被相続人の債務及び遺贈を弁済すべきことを留保して、相続の承認をすることができる。
(共同相続人の限定承認)
第九百二十三条 相続人が数人あるときは、限定承認は、共同相続人の全員が共同してのみこれをすることができる。

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4 誤り。

相続人は、「自己のために相続の開始があったことを知った時」から3か月以内に、相続を承認または放棄しなければならない。(民法915条1項本文)

なお、相続人がこの期間を経過するまでに承認も放棄もしなければ、単純承認したものとみなされる。(同921条2号 法定単純承認)

(相続の承認又は放棄をすべき期間)
第九百十五条 相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。(略)

(法定単純承認)
第九百二十一条 次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。
(略)
二 相続人が第九百十五条第一項の期間内に限定承認又は相続の放棄をしなかったとき。
(略)

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参考)民法VI 親族・相続〔第6版〕 (LEGAL QUEST) 前田陽一ほか著 (有斐閣)、C-Book 民法V〈親族・相続〉 改訂新版 (東京リーガルマインド)