今回のテーマは、「民法上の贈与」である。

それでは、「ファイナンシャル・プランニング技能検定 2級 学科試験(2023年1月22日実施)」で出題された過去問にチャレンジしてみよう。

ファイナンシャル・プランニング技能検定 2級 学科試験(2023年1月22日実施)問題51

問題 51
民法上の贈与に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。

1.書面によらない贈与は、その履行の終わった部分についても、各当事者が解除をすることができる。

2.定期贈与とは、贈与者が受贈者に対して定期的に財産を給付することを目的とする贈与をいい、贈与者または受贈者のいずれか一方が生存している限り、その効力を失うことはない。

3.負担付贈与では、受贈者がその負担である義務を履行しない場合において、贈与者が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がない場合、原則として、贈与者は、当該贈与の契約の解除をすることができる。

4.死因贈与では、民法の遺贈に関する規定が準用され、贈与者のみの意思表示により成立し、贈与者の死亡によって効力が生じる。

ファイナンシャル・プランニング技能検定 2級 学科試験(2023年1月22日実施)

正解:3

それでは、各肢を検討していこう。なお、法令等は、2022年(令和4年)10月1日現在で施行されているものに基づくものとする。

1 誤り。

書面によらない贈与であっても、履行の終わった部分については、解除することができない。(民法550条ただし書)

(書面によらない贈与の解除)
第五百五十条 書面によらない贈与は、各当事者が解除をすることができる。ただし、履行の終わった部分については、この限りでない。

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2 誤り。

定期贈与とは、一定の時期ごとに無償で財産を与える契約をいう。
そして、贈与者又は受贈者の死亡によって効力は消滅する。(民法552条)

(定期贈与)
第五百五十二条 定期の給付を目的とする贈与は、贈与者又は受贈者の死亡によって、その効力を失う。

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もっとも、この規定は当事者の意思を推測したにすぎず、反対の特約は可能である。

3 正しい。

負担付贈与とは、受贈者に一定の給付をなす債務を負担させる贈与契約をいう。(民法553条)
そして、贈与者・受贈者には、同時履行の抗弁権(同533条)が認められるほか、危険負担の規定が適用され(同536条)、受贈者が負担を履行しなければ、贈与者は契約を解除できる。(同541条以下)

したがって、「当事者の一方(受贈者)がその債務を履行しない場合」において、相手方(贈与者)が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方(贈与者)は、契約の解除をすることができる。(同541条)

(負担付贈与)
第五百五十三条 負担付贈与については、この節に定めるもののほか、その性質に反しない限り、双務契約に関する規定を準用する。

(催告による解除)
第五百四十一条 当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。(略)

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4 誤り。

死因贈与とは、贈与者の死亡によって効力を生ずる贈与契約をいう。
そして、その性質に反しない限り、遺贈に関する規定が準用される(民法554条)

もっとも、遺贈が単独契約であるのに対し、死因贈与は贈与者が生前に受贈者と締結する契約である点で異なる。そのため、遺贈が単独契約であることに由来する規定は、死因贈与には適用されない。

したがって、死因贈与は、贈与者のみの意思表示によっては成立しない。

(死因贈与)
第五百五十四条 贈与者の死亡によって効力を生ずる贈与については、その性質に反しない限り、遺贈に関する規定を準用する。

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参考)新プリメール民法4 債権各論〔第2版〕青野博之ほか著(法律文化社)、C-Book 民法IV〈債権各論〉 改訂新版 (東京リーガルマインド)