今回のテーマは、「FPと倫理・関連法規」である。

それでは、「ファイナンシャル・プランニング技能検定 2級 学科試験(2023年1月22日実施)」で出題された過去問にチャレンジしてみよう。

ファイナンシャル・プランニング技能検定 2級 学科試験(2023年1月22日実施)問題1

問題 1
ファイナンシャル・プランナー(以下「FP」という)の顧客に対する行為に関する次の記述のうち、職業倫理や関連法規に照らし、最も適切なものはどれか。

1.顧客から住宅ローンについて相談を受けたFPのAさんは、顧客から預かった給与所得の源泉徴収票のコピーを、顧客に紹介する予定の不動産会社の担当者に顧客の同意を得ないまま渡した。

2.顧客から外貨預金での資金運用について相談を受けたFPのBさんは、円安ドル高がこの先ずっと続くため、円預金の大半をドル預金に移すべきだとアドバイスをした。

3.顧客から老後に受け取ることができる年金について相談を受けたFPのCさんは、社会保険労務士の資格を有していないものの、顧客の「ねんきん定期便」に記載されている年金見込額を用いて、繰り下げた場合の年金受給額を試算した。

4.顧客から所得税の確定申告について相談を受けたFPのDさんは、税理士の資格を有していないものの、顧客の要望に応じて確定申告書の作成を代行した。

ファイナンシャル・プランニング技能検定 2級 学科試験(2023年1月22日実施)

正解:3

それでは、問題文を検討していこう。なお、法令等は、2022年(令和4年)10月1日現在で施行されているものに基づくものとする。

1 誤り。

FPは職務上知り得た情報を、顧客の同意なく第三者に漏洩してはならない。(守秘義務の遵守

FPの職業倫理
  • 顧客利益の優先
  • 守秘義務の遵守
  • 顧客に対する説明義務
  • コンプライアンス(法令遵守)の徹底

2 誤り。(金融商品取引法)

金融商品取引業者(投資助言・代理業、投資運用業)として、内閣総理大臣の登録を受けなければ、具体的な有価証券投資などの助言を行うことや、顧客から投資判断の一任を受けて投資運用を行う(投資顧問契約の締結)ことは、金融商品取引法に触れる。

なお、新聞や雑誌、書籍などを用いて経済状況や景気動向、企業業績など、投資判断の前提となる一般的な情報を知らせることは、可能である。

3 正しい。(社会保険労務士法)

社会保険労務士資格がないと、有償で労働社会保険諸法令に基づく、行政機関等に提出する「申請書類の作成」、行政機関等への「手続きの代行」等を行うことができない。

なお、年金額の試算等は、社会保険労務士資格がなくても可能である

(社会保険労務士の業務)
第二条 社会保険労務士は、次の各号に掲げる事務を行うことを業とする。
一 別表第一に掲げる労働及び社会保険に関する法令(以下「労働社会保険諸法令」という。)に基づいて申請書等(行政機関等に提出する申請書、届出書、報告書、審査請求書、再審査請求書その他の書類(その作成に代えて電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識できない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)を作成する場合における当該電磁的記録を含む。)をいう。以下同じ。)を作成すること。
一の二 申請書等について、その提出に関する手続を代わつてすること。
一の三 労働社会保険諸法令に基づく申請、届出、報告、審査請求、再審査請求その他の事項(厚生労働省令で定めるものに限る。以下この号において「申請等」という。)について、又は当該申請等に係る行政機関等の調査若しくは処分に関し当該行政機関等に対してする主張若しくは陳述(厚生労働省令で定めるものを除く。)について、代理すること(第二十五条の二第一項において「事務代理」という。)。
(略)
二 労働社会保険諸法令に基づく帳簿書類(その作成に代えて電磁的記録を作成する場合における当該電磁的記録を含み、申請書等を除く。)を作成すること。

(業務の制限)
第二十七条 社会保険労務士又は社会保険労務士法人でない者は、他人の求めに応じ報酬を得て、第二条第一項第一号から第二号までに掲げる事務を業として行つてはならない。ただし、他の法律に別段の定めがある場合及び政令で定める業務に付随して行う場合は、この限りでない。

第六章 罰則

第三十二条の二 次の各号のいずれかに該当する者は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
(略)
六 第二十七条の規定に違反した者

社会保険労務士法|e-Gov法令検索

4 誤り。(税理士法)

有償はもちろん、無償でも、税理士資格がないと、税理士業務を行うことができない

税理士業務
・税務代理行為
・税務書類の作成
・個別具体的な税務相談(税額計算を含む)

なお、一般的な情報・資料の提供や相談、講演などを行うことは可能である。

(参考)(参考)’22~’23年版 最短合格2級FP技能士(きんざい)、うかる! FP2級・AFP 王道テキスト 2022-2023年版 (日本経済新聞出版)